経済産業省は2018年6月、グローバルに活躍するスタートアップ企業を創出するために、スタートアップ企業の育成支援プログラム「J-Startup」を開始。革新的な技術やビジネスモデルで世界に新しい価値を提供するスタートアップ企業への支援が大きな盛り上がりを見せている。一方で、企業は事業拡大に伴い組織規模を拡大していくと、組織の各所でさまざまな「ひずみ」が生じるといわれており、事業拡大により人員が増加する一方で、個人や組織マネジメントの成長がその拡大に追いつかず、各所で不整合が起きるという。
同社では、このひずみの実態と乗り越え方を探求。組織マネジメント上の課題が顕在化していて、人・組織づくりの体制を構築する必要性に迫られることが想定される、組織規模が拡大中のスタートアップ企業(従業員規模50名以上~1000名未満)を「成長企業」と位置づけ、所属する人・組織づくりの責任者(経営者、事業責任者、人事責任者)300名を対象とした今回の定量調査を実施。拡大期にある企業・事業責任者の組織づくりにおける苦労を明らかにした。
調査結果におけるポイントとして、同社では次の4点を示している。
- 組織規模が大きくなるにつれ、「組織成員のうち新卒採用の割合が高い」という回答割合が高い。全体としても「中途採用のみの組織である」と回答したのは、わずか8%だった。
- 経営者・事業責任者・人事責任者が直面している「採用」「異動・配置」「評価・報酬」「育成」「代謝」「組織開発」における課題として、約5割が「次世代リーダーが育っていないこと」と回答。次いで多かったのは、「採用ブランドが低く欲しい人材が集まらない」(45.3%)、「採用した人のパフォーマンスが上がらない」(40.7%)といった、採用や採用した人材のパフォーマンスに関する課題という結果に。
- ティール組織の枠組みを用い、成長企業の経営者・事業責任者の「理想とする組織タイプ」と「現在の組織タイプ」を比較すると、現実と理想、どちらにおいても最も選択率が高かったのは、「一定の階層はあるが、成果を上げた従業員が評価を受け出世することができる組織」だった。
- 成長企業が導入している人事制度の工夫としては、「育児休暇制度」(67%)、「裁量労働制・フレックス制度」(32.7%)など、働きやすさを高める制度の回答割合が高かった。また、「全社員が一堂に会するイベント(社員総会など)」を約4割、「経営陣との交流会」を約3割の企業が用意しており、経営と従業員との意図的なコミュニケーションの機会を設けていることが明らかになった。
なお、調査結果について、同社 HRテクノロジー事業開発部 マーケティング推進グループ 石岡由紀子氏は、「結果からあらためて感じたのは、少子高齢化も進み、想定通りの採用ができない中、事業成果を、採用したプレイヤーの個の力頼みにすることは現実的ではない、ということ。企業の成長段階では育成やマネジメントで個の力、組織の力を高めていく取り組みが必要になる」とコメント。
また、同社 HRテクノロジー事業開発部 ビジネスディベロップメントグループ 荒井理江氏は、「今回改めて興味深いのは、成長企業の経営者や事業責任者における「理想の組織」として、階層といった一定のルールと個人の内発性の両面を重視した選択肢が多く選ばれた点だったように思う。(中略)今の現場が奮起し、高い内発的エネルギーをもって前進しやすくなるような組織のゴール設定、絶妙なルールとは何なのか。自社の採用力、事業のフェーズ、組織の規模や成員の成熟度など、現場の「現実」を直視し議論していくことが重要」とコメントしている。