エンジニア育成を現場任せにするのか
続いては「DX」の話だ。働き方改革は法的な拘束力があるため、やらざるを得ない側面があるが、そうではないDXを推進するためには、経営層のコミットがいっそう重要になってくる。経営層のITリテラシーが低く、情シスに丸投げしていては、成果が出ずに現場は疲弊し、既存業務にも悪影響を及ぼしかねない。
顧客の状況をヒアリングしていると、日本のDXの現状は次図のレベル2から3の間にあるのではないかと思うと、小林氏はいう。さらに、取り組みの検討さえ始めていない企業は危機的といえ、小林氏は「DXに対する共通の認識を持つところから第一歩を踏み出すべきではないでしょうか」と訴えた。
また、DXにおいて特に闇が深いのが「2025年の崖」だ。老朽化したITシステムをどうするか。この守りのITについては「今動いているシステムへの追加予算なんて、経営層に理解してもらえるはずがない」「モダンな開発環境、ツール、技術を知らないので顧客企業に提案できない」という声を耳にすると小林氏。このほか、「レガシーな技術は中堅社員に任せて、モダンな技術は新人に任せる」という声もあるというが、それではレガシーな技術を担当してきた中堅社員たちをそのまま塩漬けにしてしまうという難題が残ると、小林氏は釘を刺した。
そして最後のトピックが「エンジニア不足」だ。今の日本のエンジニア人口は90万〜100万人といわれているが、経済産業省の『DXレポート』によると、2025年には43万人のIT人材不足が起こると予測されている。さらに小林氏はIPAの『IT人材白書2019』を取り上げ、「IT人材の不足感について、“不足している”、“やや不足している”の回答が92%を占めている」と紹介した。
しかし、どうにか新しい人を採用できたとしても、自社の環境に適したスキルを持ち合わせていることを事前に見抜くのは、非常に困難だ。入社後、もし即戦力としては難しいと判断された場合、ただでさえ忙しい現場のエンジニアに新人教育を丸投げするのは酷である。そのときには、「外部委託の研修を受けさせて、効率的なキャッチアップを図ることも有効な選択肢の1つではないでしょうか」(小林氏)。
いずれにせよ、こうした人材に関する戦略は経営の一環といえ、経営層の関与が必須である。