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「IT人材ラボ Day 2020 Winter」セッションレポート | #4

自社エンジニアがずっと成長を続けられる組織をいかにつくるか、実践した答えとは――クレディセゾン 小野和俊氏

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 2020年2月26日、御茶ノ水ソラシティカンファレンスセンター(東京・千代田)において、「IT人材ラボ Day 2020 Winter」が開かれた。会場では「エンジニアが成長しつづける組織のしくみ」をテーマに5名が登壇。本稿では、株式会社クレディセゾン 取締役CTO 小野和俊氏による基調講演「自社エンジニアがずっと成長を続けられる組織をいかにつくるか」の模様をお届けする。この講演では、小野氏が自身で体験したり社内で実践したりしてきたエンジニアが成長するための施策について、技術と人間性の2面から紹介がなされた。

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エンジニア出身の経営者が語る、エンジニアを成長させる秘訣とは

 エンジニアが成長しつづけられる組織をいかにつくるか――。エンジニアの採用が困難な昨今において、エンジニアが自身の成長を実感しながら、パフォーマンスを最大限に発揮できる環境づくりは、多くの企業が頭を悩ませる課題となっている。

 小学3年生から趣味でプログラミングを始めたという生粋のエンジニアであり、新卒で入社したサン・マイクロシステムズを退社後、データ連携ミドルウェア「DataSpider」を開発・提供するアプレッソを起業した経営者でもある小野氏は、自身の経験をもとに、技術面と人間面の両方において、エンジニアが成長しつづける組織にするために大切にしている4つのポイントを紹介した。

小野 和俊氏
小野 和俊(おの かずとし)氏
株式会社クレディセゾン 取締役CTO。
1999年、サン・マイクロシステムズ株式会社に入社。入社後まもなく米国Sun Microsystems, Inc.での開発を経験し、2000年より株式会社アプレッソ代表取締役に就任、データ連携ミドルウェアDataSpiderを開発。2013年よりセゾン情報システムズHULFT事業CTO、2015年より取締役CTO、2016年より常務取締役CTO。「バイモーダル」な企業文化の実現とSIerの今後のあり方の模索、そして日本発のエンタープライズプロダクトの世界での成功に向けて様々な取り組みを行い、2019年より株式会社クレディセゾンCTOに就任。目下、事業会社のデジタル化を実現すべく邁進中。

技術面での成長を促す2つのポイント

ラストマン戦略

 ラストマンとは、特定のテーマにおいて社内で最も知見のある人物のことを指す。

 「Javaをつくっているサン・マイクロシステムズに入れば、Javaの開発の仕事ができる」と考えた小野氏は、1999年に同社に入社した。ところが、いざ入社してみると、サン・マイクロシステムズの主な生業はソフトウェア開発ではなく、サーバーのハードウェア販売であったことを知る。

 「ソフトウェア開発がやりたかったけれど、間違えてハードウェアの会社に入ってしまった。ハードウェアの知識では到底勝てないだろうけれど、ソフトウェアの特定分野でなら社内で一番詳しい“ラストマン”になれるかもしれない」。そう考えた小野氏は、当時先進の技術であったXMLに着目し、社内で勉強会を開催。そのうちに社内で「小野はXMLに詳しいらしい」と噂が立つほどになったという。

 例えば、高校生が英語の学力を伸ばそうと思ったとき、まずは仲間内でトップを目指す。それを達成したら、次はクラスでトップを目指す。それも達成したら都道府県でトップを目指すといった要領で、段階的に範囲を広げていくのだ。

 この過程において、もしトップになるのが難しいと感じたら、英語全般ではなく、ヒアリングだけ、単語だけ、といった対象分野を細分化するのも1つの手である。それでもダメなら、向いていないということ。英語はあきらめて、すぐ他の分野にピボットすべきだ、と小野氏は説く。

 ラストマン戦略の良いところは、周囲から敬意を払われることで、自尊心が芽生えるとともに、次の3つの利点があるのだという。

  1. 目標が低いので、実現できそうだという実感が持てる
  2. 低い目標でさえ実現できない場合には、早めに方向転換ができる
  3. 目標が段階的に高くなっていくため、自信をつけながらストレスが少ない状態で成長していける

 組織としてラストマン戦略を行う場合、誰がどの領域のラストマンを目指すのかをスキルマップとしてまとめていくとよい。会社のニーズを洗い出し、その中から興味のあるもの(ラストマンになりたいもの)を自ら選ばせることで、組織としてのスキルマップを埋めていく。これにより、個人の成長がチーム全体の成長へとつながるのだ。

Practice over Theory 〜理論より実践を〜

 業界に入った当初は「自分の技術で世の中をより良くしたい」と目を輝かせているエンジニアだが、実際に入ってみると“システムは正常に動いて当たり前。エラーが起きたら怒られる”という現実を突きつけられる。

 しかし本来、エンジニアは何もないところから新しい体験を生み出せる、魔法使いのような仕事のはず。そうした“ものづくりの楽しさ”を思い出してもらいたいと考えた小野氏は、3か月に一度の開発合宿を始めた。

 「普段は金融事業部でCOBOLをずっと触ってきた人たちが、超強大なスクリーンにコードを映してモブプロ[1]をすることで、『あいつのコードはすごい!』『こんな風にできたらいいな』と体感することができる。みんなで業務とは関係のない技術に挑戦してみることで得られるものは、エンジニアの自己成長を促す上で、大きな効果があると考えています」(小野氏)

[1]: モブプログラミング。3人以上で1台のコンピューターだけを使い、相談などをしながら1つのプログラムを記述していく開発手法。

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この記事の著者

野本 纏花(ノモト マドカ)

フリーライター。IT系企業のマーケティング担当を経て2010年8月からMarkeZine(翔泳社)にてライター業を開始。2011年1月からWriting&Marketing Company 518Lab(コトバラボ)として独立。共著に『ひとつ上のFacebookマネジメント術~情報収集・人脈づくり・...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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