クラウド型健康管理システム「Carely」を開発・運営するiCAREは、Carelyに蓄積する働く人の健康データを活用して、インシュアランス(保険)とテクノロジー(技術)の融合であるインシュアテックに新規参入した。
日本では近年、健康増進型保険が注目を集めている。従来の保険は、加入時の健康状態に応じて保険料が決まる仕組みとなっているが、健康増進型保険では加入後に健康に関する一定の基準をクリアすることで、保険料の割引や払い戻しを受けられる仕組み。この保険は、健康診断などの結果を活用して、個人の総合的な健康状態を年齢で表した健康年齢を中心に設計されている。
こうした中で生まれた健康増進型保険は、契約者にとっては保険料負担の軽減、被保険者にとっては継続的に健康で居続けられることのインセンティブ、生命保険会社にとっては良質な被保険者の母集団の形成、これら3つが同時に達成される保険といえる。
しかし、健康増進型保険には、アドバンス(健康の促進)とエビデンス(健康である証拠)という2つの乗り越えるべき壁がある。健康増進のために運動や食事改善に取り組み続けるアドバンスの側面で苦労する人が多い一方で、それらの結果を可視化して管理し続けるエビデンスの側面についても、その面倒さゆえに継続を困難にさせている。
iCAREは生命保険領域に参入するにあたり、Carelyを活用する企業に属する従業員が、毎年行う健康診断などの結果を健康増進型保険のエビデンスとして、簡単に活用できるような仕組みを整備していく。具体的には、自身が加入している健康増進型保険のエビデンスとしてCarelyに入力された健康データを自動的に活用できたり、該当する健康状態の集団に適正な保険商品を紹介するセミナーを開催したりする。
同社はすでに複数の生命保険会社とコンタクトを取り、代理店契約締結を進めながら、構想の実現に向けてスタートしているという。また、健康診断結果のみならず、現代社会では無視できない精神疾患の予防機会となるストレスチェックや、勤務時のタイムリーな健康状態を示す労働時間などの結果も組み入れることで、現在の健康年齢よりさらに精度の高い指標を新たに策定することも視野に入れている。そして、その指標を中核に据えた保険商品の開発にもチャレンジしていくとしている。