リクルートマネジメントソリューションズは、2020年12月、テレワークを月の半分以上行っている20代、30代の一般社員493名に対して、「テレワーク環境下における人事評価に関する意識調査」を実施し、「テレワーク環境下で評価の納得感はどのように変わったのか」など、調査結果から見える実態について公表した。
人事評価の重要度
約8割(77.3%)が人事評価を重視していると回答。これは2016年の同社調査と大きく変わらない。
人事評価を重視する/重視しない理由
人事評価を重視する理由は、「報酬や昇進・昇格が決まるものだから」(72.2%)が圧倒的に多く、2016年調査(59.1%)と比べても増えている。
自社の人事評価制度についての満足度
自社の人事評価制度に満足している(「とても満足している」~「どちらかといえば満足している」)のは約6割(60.5%)。
自社の人事評価制度についての満足度/不満足の理由
自社の人事評価制度について満足している理由としては、「何をがんばったら評価されるかが明確だから」(50.3%)が最も多い。不満足の理由は「何をがんばったら評価されるのかが曖昧だから」(65.1%)が圧倒的に多かった。これらはいずれも2016年(それぞれ41.0%、54.4%)より選択率が高い。明確な評価基準の設定は、評価制度において基礎的なことであるが、テレワーク下では、これが整備されていないことで、不満が高まることが考えられる。
直近の人事評価についての満足度
直近の評価結果に納得感があるのは7割弱(65.3%)。評価の納得感と職務適応感(仕事にやりがいを感じる、会社が期待する成果を出せている、職場の人とうまくやれているなど12項目を尺度化)の関係を確認すると、その相関は高く(0.63)、公平感のある処遇の分配のためだけでなく社員の活用と育成のためにも、これを高めていくことは重要であることが改めて分かる。
人事評価結果の納得感と目標管理プロセス(納得感高低群の比較)
目標設定に自分の意向が尊重されるかどうか、目標がどのようなものだったかよりも、十分に上司と話し合えたと思えることが、納得感に強い影響を与えるようだ。テレワークの頻度が高い場合でも、目標管理の仕組みが十分なコミュニケーションを伴って運用されれば、評価への納得感や仕事への意欲を引き出すことは可能だと考えられる。
テレワーク環境下での人事評価の納得感の変化
テレワークに慣れるにつれ、やり方次第でむしろ評価の納得感を高めていける可能性が感じられるもよう。テレワークをきっかけに、これまで以上に部下の主体性や自律性を発揮することができれば、評価の納得感を高めることができ、評価者の負担も軽くすることもできる。
テレワーク環境下での人事評価の納得感が変化した理由
納得感の変化の理由は、テレワークへの慣れ、職務のタイプによって捉え方は違うと思われるが、目標設定に関する納得のいく対話、遂行場面での的確なコミュニケーションを重ねることで、乗り越えていけるものが多いと感じる。
テレワークで正しく評価されるために意識していること
テレワークで正しく評価されるために意識して心がけていることについて自由記述してもらったが、このような部下からの主体的・自律的な働きかけは、テレワークになる以前から、上司としては望んでいたことではないだろうか。テレワーク化をきっかけに、こうした意識が部下側にも高まっていけば、上司部下間のコミュニケーションはより充実し、仕事も評価も円滑に進むと思われる。
今後の望ましい人事評価のあり方
今後の望ましい人事評価のあり方については、いずれの観点も、圧倒的にいずれかに偏ったものはなく、対照的な考え方が混在することが分かった。
人事評価制度について、良い点・改善してほしい点
評価基準が明確であることは、評価制度への満足、不満足を左右する最も大きな要因であり、対処すべきだろう。 評価をどれだけ適切に行っても、給与や賞与に反映されないのであれば、モチベーションにはつながらないということであろうが、短期的な業績を追いかけすぎるのは、本人や経営の持続的成長にマイナスな面もある。どの程度の時間軸で評価と処遇の関係を設計するかは難しいところだ。評価方法については、納得感と人的コストのバランスが重要な観点である。