IPA(独立行政法人情報処理推進機構)は「デジタル時代のスキル変革等に関する調査報告書」を公開した。
IPAは第4次産業革命への対応に向けて求められるIT人材の役割や能力を明確化し、スキル変革や人材育成を促進することを目的として、2018年度に「DX推進人材の機能と役割のあり方に関する調査」、2019年度に「DX推進に向けた企業とIT人材の実態調査」を実施。これらの調査を通じて、第4次産業革命の実現には、デジタル技術の有効活用のみならず、それを推進する基盤となる人や組織のマネジメントそのものの変革も重要なポイントであることが明らかになった。
そこで2020年度は、変革を推進するための組織や人材マネジメントのあり方の深掘りを目的に、国内企業1857社、国内企業に所属するIT人材1545人、海外企業に所属するIT人材616人へのアンケート調査を行った。併せてインタビュー調査と文献調査も実施し、スキル変革の促進要因、阻害要因などを分析した。調査期間は2020年8月~2021年3月。
DXに取り組んでいる企業は全体で53.2%と、昨年度調査より10ポイント増加した。従業員1000名以下から100名以下の各企業規模層で満遍なく増加しており、従業員1001名以上の企業層が取り組みの中心であった2019年度調査時点と比べ、企業規模によるDXへの取り組み格差が解消しつつある傾向が見られた。 (回答数=1857社)
DXで成果が出ていないと自己認識している企業(事業会社)では、IT人材が「大幅に不足している」という回答が52.9%と人材不足感が強いものの(回答数=289社)、「採用したい人のスペックを明確にできない」という回答が33.5%あり、成果あり企業に比べて多いことが分かった。また、「魅力的な処遇が提示できない」の割合も40.8%と高く、制度面での整備も遅れていることがうかがえる。(回答数=272社)
人材市場における自身のスキルレベルが「分からない」とする比率が日本では34.3%(回答数=1347人)と、米国2.7%(回答数=219人)、ドイツ6.1%(回答数=277人)に比べて非常に多いことが分かった。
また、現在のスキルレベルが人材市場において十分競争力があるとする比率が日本は21.5%(回答数=1347人)と、米国69.4%(回答数=219人)、ドイツ65%(回答数=277人)に比べて非常に低い結果となった。
なお、同調査では上記のほか、学びや人材流動の状況、組織に求められる要件に関する企業側と個人側のギャップ、先端領域への転換に対する意識や経験により人材を5つの「転換タイプ」に分類した分析など、多数の結果を本編に掲載している。