「自ら行動し、成長できる人」を生み出すリクルートの文化
リクルートらしい文化は数多くありますが、その中でも私のマネジメントの考え方に影響を与えたのは、次に挙げる6つです。
(1)圧倒的当事者意識で業務を推進
リクルートでは入社時から「君はどうしたいの?」と問われ続けます。そして「じゃあ、やってみて」と言われ、自分で思考し、自分が動かなければ進まないという「当事者意識を持たざるを得ない状況」を新人時代から繰り返し創ってもらっていました。このトレーニングの積み重ねで、「当事者意識は後天的に身に付く」ということを私自身が経験しています。
(2)WILLCANMUSTシートで自己実現
これはリクルートのマネジメントの本質だと思っています。「WILL=3年後・この仕事で成し遂げたいこと」「CAN=得意なこと・苦手なこと」「MUST=今期のミッション」という3つを、本人と上長がそれぞれ意見を書いていました。そして、クォーターごとに進捗を、半期ごとに成果を報告する面談を実施していました。私がマネージャーを務めていたときには、毎月面談をすることで、メンバーがWILLに立ち戻る機会を意図的に設け、相談しやすい環境を創れるように心掛けていました。「会社から言われたから」という受け身な仕事ではなく、自らやりたいと思っていることを、仕事を通じて実現していくことが、やる気を引き出す重要なことだと考えさせられる文化です。
(3)達成は通過点であり、さらにその先の高みを目指す
毎日、日報(=部・チーム・個人の達成率やランキング)が届き、自分の現在地を否が応でも知らされます。目標をどう達成していくかを日々考えなければ、自分の現在地を変えることはできません。ただ、目標は通過点です。中には自分自身の成長のため、自ら達成率140%といったアスピレーション目標を立て、会社から設定された以上の目標達成を目指している人もいました。
(4)チームメンバーの相互理解による信頼構築、業務がスムーズに
メンバーの幼少期、家庭環境、学生時代の過ごし方、子どもの頃の夢など、各人の価値観の源泉となるものをチームのみんなで徹底的に深堀し合い、シェアする場が設けられていました。お互いの判断軸や好き嫌いなどを理解することが目的です。これにより、コミュニケーションが円滑になり、困ったときもすぐに相談できるなど、業務がスムーズに進む環境が形づくられました。また、あだ名で呼び合う文化もリクルートならではだと思います。社長も部長もあだ名で呼び合うフランクな関係性です。
(5)お節介が生み出す相互扶助
どの方もとにかく忙しそうでしたが、それでも質問に行くと、1を聞いたら10が返ってきました。さらには「●●ちゃん、ちょっと困ってそうだね。話を聞こうか?」「●●くん、あの態度しちゃうのはもったいないな。こういう言葉を使ったほうがよいよ」など、とにかく、良い意味で誰もがお節介な文化でした。そこには、愛があるからこその助けですし、先輩たちもみんなそういったお節介に助けられてきたからこそ、後輩をお節介で助けてくれているのだなと感じます。
(6)成果を圧倒的に褒め、実績へ
リクルートのキックオフは豪華で大胆なものでした。年に4回実施され、グランドプリンスホテル新高輪(東京・港)にある大宴会場「飛天」で開催されました。社長メッセージ、MVP表彰、HRアワード(各部署の価値ある仕事発表の大会)、トップガン(各社からのイノベーティブな仕事発表の大会)など、リクルートの表彰方法は独特です。
とにかく、褒めるということに対しても、「圧倒的に褒める」という雰囲気。MVPで表彰されるメンバーは大きな壇上に立ち、まぶしいほどのスポットライトを浴びる中で、赤いマントを着せられてトロフィーを受け取り、成し遂げた仕事の価値や日々の感謝をみんなの前で述べます。下で見ているメンバーにとっては、壇上に立つ人に憧れと嫉妬を感じ、いつか自分も壇上に立ってスポットライトを浴びたい! と思うと同時に、これが自分たちの仕事の価値なのだと再確認できる機会でした。また、「表彰する人=経営のメッセージ」ですので、会社の方針として、どういう人を褒めるのか、ということも重要だということを学びました。