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人事労務事件簿 | #11

育児負担の重さを考慮、転勤命令認められず(東京地裁 平成14年12月27日)

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 社員に下す転勤命令は、企業にとって必要な経営判断です。ただし、家庭の事情などにより、社員が辞令を甘受できないこともあります。転勤命令には合理性がある場合に、社員の都合はどこまで配慮されるのか。今回紹介する裁判例は、その一つの線引きを示しています。

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1. 事件の概要

 社員が、会社の転勤命令が無効であるとして、転勤命令に基づく就労義務がない仮の地位を定める仮処分命令を申し立てた事案です。

(1)債権者(以下「社員A」)の概要

 社員Aは男性であり、妻、長男および長女とともに暮らしており、実父母が埼玉県さいたま市において暮らしています。

(2)債務者(以下「会社」)の概要

 会社は、教育書・学習参考書の出版等を主たる目的とする株式会社です。東京本社のほか、大阪市内に大阪支社などがあります。

 会社には、その従業員で構成する労働組合(以下「本件組合」)があります。

(3)雇用契約等

 社員Aは、平成2年3月に会社に従業員(総合職。幹部候補)として採用されました。入社後2年半は新入従業員全員に現場を経験させる会社方針の下に営業職に従事しましたが、その後約10年、東京本社学習教材部門編集部2課に所属し、学習教材部編集者として勤務していました。

(4)会社の就業規則

  従業員の異動に関し、次のように定めています。

  • 第6条 会社は業務上必要があるときは、従業員に異動を命ずることがある。
  •   2 前項の異動とは、配置転換、職務変更、転勤及び人事上の異動をいう。
  •   3 従業員は正当の理由なくして、異動を拒んではならない。

(5)大阪支社の状況および異動の内定

 大阪支社は人員が不足していた上、平成13年6月に経験の長い営業部員2名が突然退社したため、C副支社長も営業を担当することになりました。このため、大阪支社の増員を計画しました。

 そして、異動対象者を選定する上で、以下の要素を考慮しました。

  • 営業の経験があり、また入社後相当程度年数が経っている者であること
  • 将来の適切な人的構成を実現すること
  • 将来の学習参考書部門営業部の幹部となりうる者を養成すること
  • 人材の活性化を図ること

 会社は、上記の要素を考慮し、社員Aの外2名の大阪支社への異動を内定しました。

(6)異動の打診および辞退

 総務部長Bは、平成14年4月16日、社員Aに対し、「大阪支社で人が足りないので、社員Aに行ってもらいたい」など説明し、転勤について打診しましたが、なかなか返事をもらえず、22日まで待つことにしました。

 社員Aは、22日、総務部長Bに対し、以下のことを理由として、大阪転勤を辞退したい旨を申し出ました。

  • 2人の子のアトピー性皮膚炎がひどいこと
  • 父親が無職であり、母親がスーパーに勤務しているが、同年6月で60歳の定年になること、その後、自宅に引き取ることも考慮していたこと
  • 大阪との二重生活では、家のローンが大変であること

(7)異動について再度説得

 総務部長Bは、23日、社員Aに対し、役員会での検討の結果、社員Aが示した状況は転勤を拒否する理由とはならないと判断する旨を伝えました。

 その際、社員Aに対し、「両親を引き取るなら、まだ60歳でありご両親に子供さんの面倒を見ていただくこともできるのではないか」「大阪でもアトピー治療のための治療機関を探してあげる」などの話をしました。

 それでも、異動について難色を示していたので、「業務命令だから、拒否すれば懲戒にかけるということも有り得る」として、あくまでも大阪転勤に応じるよう求めました。

 社員Aは、26日に本件組合に加入しました。

 そして、本件組合と総務部長Bと協議を重ねましたが、会社は、「方針はすでに決まっており変えられない」と述べて、転勤命令の撤回または一時停止を検討する余地がない旨の姿勢をとりました。

(8)本件転勤命令

 会社は、平成14年5月7日、社員Aに対し、就業規則6条に基づき、「社告」をもって、大阪支社勤務を命ずる旨の業務命令(本件転勤命令)を発しました。

 しかしながら、社員Aは、これを不服とし、赴任時期である同年8月以降、大阪支社へ赴任しませんでした。

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この記事の著者

坂本 直紀(サカモト ナオキ)

人事コンサルタント、特定社会保険労務士、中小企業診断士、坂本直紀社会保険労務士代表社員。就業規則作成・改訂、賃金制度構築、メンタルヘルス・ハラスメント対策社内研修などを実施し、会社および社員の活力と安心のサポートを理念として、コンサルティングを行う。 ホームページに多数の人事労務管理に関する情報、規定例、...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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