インストールの種類
まず、インストール方法には大きく2種類あることを押さえましょう。
- 方法1:ソースからインストールする
- 方法2:パッケージ管理ツールを使用してインストールする
用語確認
- ソース
- ソフトウェアを実装するスクリプト(プログラム)が、読み取れる形式になっている状態のことをソース、ソースが書かれているファイルをソースファイルといいます。このソースをコンパイルし、バイナリ形式にした状態を所定のディレクトリに配置することが、ソフトウェアのインストールといえます。
- パッケージ
- ソフトウェアのインストールに必要なファイルを1つにまとめたものをパッケージといいます。多くのディストリビューションでは、インストールできるパッケージ形式が決まっています。また、パッケージのインストールにはパッケージ管理ツールを使用します。
- パッケージ管理ツール
- パッケージをインストール/アンインストールする際に使用するツールです。インストール時に、パッケージ同士の依存性[1]をチェックしてくれるツールもあります。パッケージ管理ツールは、1つのパッケージ形式に1つだけというわけではありません。今回は、LPICで問われるパッケージ管理ツールについて見ていきます。
1つ目の「ソースからインストールする」方法では、ディストリビューションによる差異はありません。一方、2つ目の「パッケージ管理ツールを使用してインストールする」方法では、ディストリビューションによって使用するコマンドが違います。ディストリビューションごとにパッケージ管理ツールが異なるためです。
LPICで登場するパッケージ管理ツールは次のとおりです。
- Red Hat系:RPM、YUM
- debian系:dpkg、APT
今回は、Red Hat系のパッケージ管理ツール(RPM、YUM)のコマンドを使って、Linuxでのソフトウェアインストールを解説していきます。
注
[1]: あるパッケージでインストールしたソフトウェアが動作するのに、他のパッケージでインストールされるソフトウェアが必要な(依存している)場合があります。そうしたパッケージ間の関係のことを「依存性」といいます。
方法1:ソースからインストールする
本稿では、「CUPS」という印刷システムパッケージをインストールしてみます。CUPSはプリンタを管理するソフトウェアで、Linuxで印刷を行う際に使用します。CUPS自体には深く触れませんが、CUPSはLPIC 102試験の出題範囲に含まれているので、CUPSをインストールしたら、設定ファイルなどもしっかりと確認しておくと一石二鳥でしょう。
それでは、CUPSをソースからインストールしていきましょう。まず、WebサイトからCUPSのソースをダウンロードします。
ダウンロードするコマンドは次のとおりです。今回はバージョン2.1.0を選択しました。
# cd /usr/local/src # wget https://www.cups.org/software/2.1.0/cups-2.1.0-source.tar.bz2 # ls cups-2.1.0-source.tar.bz2
ソースをダウンロードできたら、次にダウンロードしたファイルを解凍・展開です。
# tar xvfj cups-2.1.0-source.tar.bz2
tar
コマンドも、LPICレベル1で問われるので覚えておきましょう。アーカイブを作成したり、逆に解凍・展開したりする際に使用します。展開すると「cups-2.1.0」というディレクトリができあがるので、そこに移動します。
# cd cups-2.1.0/
ls
コマンドなどで中を見てみるとわかりますが、configure
というスクリプトがあります。configure
スクリプトは、コンパイルが成功するようOSの環境をチェックし、コンパイルに必要な「Makefile」というファイルを生成する役割を担っています。また、インストールディレクトリや、追加モジュールの有効/無効なども、オプションで指定することができます。
このconfigure
スクリプトを以下のように実行しましょう。prefix
オプションで、インストールするディレクトリを/usr/local/cupsディレクトリに指定しています。
# ./configure --prefix=/usr/local/cups
configure
の実行が成功し、Makefileができあがったら、次にコンパイルとインストールを実行します。
# make # make install
インストールが完了したら、configure
のprefix
オプションで指定した/usr/local/cupsディレクトリをのぞいてみましょう。
# cd /usr/local/cups # ls bin/ etc/ include/ lib/ lib64/ sbin/ share/ var/
CUPSのスクリプトや設定ファイルが格納されていることがわかります。ここまでがソースからインストールする手順です。この流れはほとんどのソースからインストールする手順で共通です。まとめておきましょう。
ソースからインストールする手順まとめ
-
手順1.アーカイブ化されたソースをダウンロード(
wget
コマンド) -
手順2.アーカイブを解凍、展開(
tar
コマンド) -
手順3.展開されたファイルの
configure
スクリプトを実行 -
手順4.コンパイル(
make
コマンド) -
手順5.インストール(
make install
コマンド)
結構手順が多いですよね。面倒だと感じるかもしれません。しかし、特定のバージョンのインストールや様々なオプションの指定など、細かい指定が必要な場合には、このインストール方法が適しています。
一方、パッケージ管理ツールを使用してインストールする方法は、これよりかなりシンプルです。ただし、インストールの設定を細かくは指定できません。