パーソル総合研究所は、経営・人事に資する提言を行うことを目的に、女性活躍推進に関する調査を実施し、その結果を発表した。
調査の概要と結果は以下のとおり。
女性管理職の割合別に企業を4フェーズ:Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳに分類すると、女性管理職がいないフェーズ【Ⅰ】の企業は25.3%
同調査対象である全国の従業員規模50人以上の企業800社について、各社の女性管理職の割合に基づき、0%の企業をフェーズ【Ⅰ】、1%以上10%未満の企業をフェーズ【Ⅱ】、10%以上20%未満の企業をフェーズ【Ⅲ】、20%以上の企業をフェーズ【Ⅳ】と4つのフェーズに分類した。全体ではフェーズ【Ⅱ】の企業が最も多く41.5%、次いでフェーズ【Ⅰ】の企業が25.3%となった。
企業の人事・経営層が感じている課題は、女性管理職比率の高さに関係なく、「女性の昇進意欲のなさ」「経験不足」が上位。女性管理職の比率が上がっても、女性の管理職意向は上がっていない
女性活躍を推進する上で企業の人事・経営層が感じている課題を見ると、「女性の昇進意欲が無い」が42.4%で最も多く、次いで「十分な経験を持った女性が不足している」(41.6%)、「登用要件を満たせる女性が少ない」(40.8%)と続く【図表2】。これらの課題は、フェーズ(女性管理職割合)別に見ても、どのフェーズの企業にも共通して課題感が高かった(図省略)。
女性活躍が進んだ場合、女性の管理職意向に変化があるのかを見たところ、どのフェーズでも大きな変動なく横ばいであり、組織内の女性管理職比率が高まっても、女性の管理職意向が上がっていない【図表3】。
女性向けの活躍推進策も、テレワークによる働き方も、女性ではなく、男性の管理職意向を高める効果が見られた。子供を持つ女性のみ、テレワーク実施率が高いほど残業時間が長くなる傾向
「女性育成のためのスポンサーシップ制度」や「女性のロールモデルのインタビューや事例の公開」、「イクボス宣言など、両立支援に積極的なマネジメントの推進」などといった、女性を主な対象とした施策は、女性の管理職意向を直接上昇させておらず、男性の管理職意向を上昇させている【図表4】。
勤務形態に占めるテレワーク割合の高さは、男性の管理職意向を上げる影響は見られたが、女性ではその傾向が確認できなかった【図表5】。また、子供を持つ女性のみにおいて、テレワーク実施率が高くなるほど残業時間が長い傾向が見られた【図表6】。
ライフイベント別に見ると、未婚期間と比較して、結婚後は管理職意向の男女差が拡大する傾向。また、育児期間における「給与」と「勤務時間」の重視度で男女に大きな違いが生じている
男女の管理職意向をライフイベント別に見ると、未婚期間と比較して、結婚後は男女の管理職意向の差が開く【図表7】。育児期間においては、女性は男性に比べ「勤務時間」の重視度が高い一方、男性は「給与」の重視度が高いという違いが見られた【図表8】。
企業で実施されている残業対策は、労働時間に上限を設ける【管理的な施策】が多く、残業の【組織的原因の改善に努める施策】は少ない。組織的原因の改善に努める企業のほうが、管理職意向がある女性の割合が多い
企業における残業対策の実態を見ると、「退勤管理の厳格化、チェックシステムの導入」や「ノー残業デーの設定」、「残業の原則禁止ないし事前承認制」といった労働時間の上限を厳格に管理する施策は実施率が高い。一方、「人事評価への時間あたりでの成果観点の包含」や「残業削減のためのマネジメント層への研修」、「時短管理職」の導入といった残業を生じさせる組織的な原因にアプローチするような施策の実施率は2~3割と低い【図表9】。
実施率の低かった「人事評価への時間あたりでの成果観点の包含」を実施している企業では、管理職意向がある女性の割合が実施していない企業の1.9倍、「管理職の短時間勤務制度」や「残業削減のためのマネジメント層への研修」を実施している企業では、管理職意向がある女性の割合が実施していない企業の2.6倍と高い【図表10】。
男女の役割に関するステレオタイプのバイアスは根強く残っている。現場上司は、女性に対する幹部候補としての期待が薄く、経営者の間にも「家庭領域を女性の主な役割」とするステレオタイプがある
上司側の部下への期待のかけ方を見たところ、特に小さなこどもがいる女性に対して幹部候補として期待していないことが分かる【図表11】。
また、経営層に絞って見ると、「子育てについては、男性は女性にかなわない」といった考えを持つ人が最も多く、4割を超えている。それに次ぐ意識を見ても、「男性が活躍できるのも、女性が影で支えているおかげである」「女性には家庭責任があるので、あまり責任の重い仕事を任せるのは気の毒だ」など、「家庭領域を女性の主な役割」とするステレオタイプが広く存在する【図表12】。
女性活躍推進に対する懐疑心が広く見られる。そうした企業では管理職意向がある女性の割合は少ない
自社の女性活躍推進の活動全般に対して、「法律の改正に合わせて行っているだけだ」「表面的な世間体を整えているだけだ」「実際には効果が薄い」と捉えている人が女性で4割、男性でも3割を超えた。一方で、「自社には必要ない」は男女ともに約1割と低い【図表13】。また、自社の女性活躍推進の活動に対する懐疑心が高いと、管理職意向は低くなる(図省略)。
転職先企業について女性が知りたい「人的資本開示項目」は、「男女別の平均賃金」や「女性管理職・役員比率」
就業者が転職先企業について知りたいと感じている主な人的資本開示項目を聞いた。1位は「給料以外の福利厚生」、2位は「年代別の平均賃金」、3位は「ワークライフバランス・働き方改革の推進状況」となった【図表14】。
男女の就業者で比較したところ、女性では「男女別の平均賃金」「女性管理職・役員比率」が高く、男性では「次世代経営者の育成計画」「重要ポストの内部登用率」が高い【図表15】。
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