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HRzine Day 2022 Summer セッションレポート | #1(AD)

従業員エンゲージメントが上がる道理・下がる原因 リンクアンドモチベーションがデータで解明

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従業員エンゲージメントを左右する4つの要因と2つの急所

 従業員エンゲージメントとは、「企業と従業員の相互理解・相思相愛度合い」と解釈できる。これが転じて、「会社への愛着心、仕事への情熱度合い」とも受け止められる。いずれにせよ、直訳すると「エンゲージメント=婚約」であることから、企業と従業員の結びつきが強くなればなるほど好循環が生まれるし、逆に弱まれば関係解消(退社)に至ることは想像にたやすい。

 事実、冒頭で紹介した同社と慶應義塾大学岩本研究室の共同研究結果でも、従業員エンゲージメントの向上により、「労働生産性の向上」「営業利益率の向上」「退職率の低下」「顧客満足度の向上」「株価の向上」といった効果が生じることが証明されているという。

 では、従業員エンゲージメントを左右する要因には、何があるのか。山中氏は次の4つを示した。

Philosophy(目標の魅力)
明確な理念・経営計画・企業の成長性・ブランド
Profession(活動の魅力)
事業優位性・事業領域の広がり・仕事のやりがい・商品サービス
People(組織の魅力)
風通しの良い風土・若手の活躍・魅力的な先輩・経営陣の魅力
Privilege(待遇の魅力)
最先端の設備・納得感のある給与・福利厚生。就労実態

 しかし、「従業員エンゲージメントの向上に向けて、サーベイをもとに悪いところを改善しようとしがちだが、これは悪手である」と山中氏は指摘する。そもそも4つの要因すべてを完璧にするのは不可能だ。経営資源は有限であり、企業によって得手不得手もあるからだ。

 では、どうすればよいのか。「従業員エンゲージメント向上を実現するには、『診断』と『改善』を繰り返すべきであるが、それぞれに押さえるべきポイントがある」と山中氏は述べる。

 まず「診断」に関していえば、満足度を測ると同時に「期待度」を把握することが重要だ。リンクアンドモチベーションの提供する「モチベーションクラウド」を活用すれば、1つの項目に対する満足度とともに、期待度も合わせて聞くことができる。これにより、次図のような4象限で、組織の強みと弱みがあぶり出される。次にやるべきことは、次図の青枠で示された不満理由の解消とともに、赤枠に入った組織の強みから貢献理由を創造することだ。

[画像クリックで拡大表示]

 そして「改善」に関しては、同社が20年間蓄積したデータから見えてきた、多くの企業で組織の弱みとなっている2つの項目が紹介された。

 モチベーションクラウドで調査できる64項目中ワースト1位となった項目は、「階層間の意思疎通」である。この項目が組織の弱みに入っていると、「現場は会社が何を考えているのか分からない」あるいは「会社は全然現場のことを分かっていない」という状態に陥っている。このような状態では、戦略への共感が得られないため、現場で実行されず、成果につながらなくなってしまう。

 「管理職から現場へ指示を出すときに、行動だけの指示で終わっていないか、ちゃんと目的や意味まで伝えられているのか、しっかりと見直していただきたい。従業員エンゲージメント向上に向けた組織改革の成果が出るかどうかは、管理職のピープルマネジメントを改善できるか否かにかかっている」(山中氏)

 続いて、ワースト2位の項目は、「適切な採用・配置」だ。自社が事業状況に適した採用・配置を行うことを期待しているが、実態が伴っていない結果となっている。とにかく忙しすぎて現場が疲弊していたり、興味のない仕事に就かされていると感じていたりすることが考えられる。

 こんなときに行うべきは、新たな人の採用ではない。「目的→対象→役割→方法→基準→納期」という“期待値調整のフレームワーク”を用いたタスクマネジメントにより、仕事の進め方を見直すことが重要だ。

 いずれも鍵を握るのは管理職だ。「管理職には経営と現場の“結節点”としての役割を果たすことが求められている。管理職が経営方針や理念を十分に理解した上で、各現場の行動に落とし込めるかどうかで、実行力に大きな差が生まれる」と山中氏は説き、管理職に求められるマネジメントの4象限を次のように示した。

[画像クリックで拡大表示]

 とはいえ、これらすべてを網羅できるパーフェクトな人間はそういない。管理職が成長するにも時間がかかるし、得手不得手があって当然である。苦手なところは誰かサポートできる人をアサインするなど、職場全体でマネジメントが機能する環境を構築することが大切だ。

 加えて、「効率的な『改善』を行う上で外せないポイントとして、『従業員エンゲージメントの高低によって、組織改善の打ち手は変わる』ことが挙げられる」と語る山中氏。従業員エンゲージメントが高ければ、どんなアクションプランを立ててもうまくいくし、逆に従業員エンゲージメントが低ければ、何をやってもうまくいかない。従業員エンゲージメントが低いことが分かっているのであれば、経営陣や管理職が率先垂範で現場と信頼関係を構築する努力をしない限り、どんな施策も意味を成さないと肝に銘じておきたい。

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この記事の著者

野本 纏花(ノモト マドカ)

フリーライター。IT系企業のマーケティング担当を経て2010年8月からMarkeZine(翔泳社)にてライター業を開始。2011年1月からWriting&Marketing Company 518Lab(コトバラボ)として独立。共著に『ひとつ上のFacebookマネジメント術~情報収集・人脈づくり・...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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