オンボーディングのゴールは?
岡本勇一氏(以下、岡本) この連載では通常、社内の人事や教育などを担当されている方にお話を伺うことが多いのですが、御社にはそういったポジションの方がいらっしゃらないということで、CXOの栄前田さんにご登場いただきました。人事や教育担当のポジションを設置していないのには、何か理由があるのですか。
栄前田勝太郎氏(以下、栄前田) ゆめみは、顧客に私たちの価値である「Quality & Agility」を提供するために「自律・自学・自責」を原則としています。これは決してお題目ではなく、これを実現するための社内制度や仕組みづくりなどを試行錯誤しながら実践しています。例えば、人事や教育に関しても「自分で自分の役割を決める」「自分で学ぶべきものを決める」という自律型組織を目指しており、基本的には自分自身ですべて決定し、行動することを前提としています。
とはいえ、さすがに入社直後は社内の仕組みや情報にアクセスするためのサポートが必要と考え、オンボーディングの仕組みを設けています。ただし、それも受け身で聞いていればよいわけではなく、入社したその人が自ら動いて習得していくものになっています。
岡本 人事関連のポジションを置かれていないのは、一人ひとりが自律した組織を目指されているからなのですね。では、そんな御社におけるオンボーディングの定義とそのゴールについて教えてください。
栄前田 前提として、ゆめみのオンボーディングは完成しておらず、発展途上にあります。全社的に自律分散型かつアジャイル型組織である中で、オンボーディングも自学(セルフオンボーディング)を基本とし、「ゆめみの中で自由に泳げるようになること」をゴールとして設定しています。
そもそもゆめみでは、仕組みやルールなどあらゆるものをドキュメント化し、「オープンハンドブック」としてNotionで共有して誰でも閲覧できるようにしています。それらを参照できるようになれば、ほとんどのことは自分で調べて実行できます。ただ、オープンハンドブックに掲載されている情報はあまりにも膨大なため、「何から学べばよいか」「どう検索すればよいか」を知っておく必要があります。それらを学ぶ機会をオンボーディングが担っているというわけです。
岡本 仕組みやルールを明文化することで自律文化を醸成しているのですね。では、その制度・仕組みを導入された時期とその背景や目的についても教えてください。
栄前田 2018年に「アジャイル組織宣言」を行い、スタッフ一人ひとりが自身のマネジメントを行い、自律的に学んで成長することを目標として設定しました。そこからオンボーディングについても仕組みづくりが始まり、私が入社した2020年4月には、(ゆめみの中で自由に泳げるようになるため)オンボーディング期間中に学習してほしい項目がまとめられました。当初はプロトタイプ版としてGoogleスプレッドシート上につくられましたが、項目の追加・変更を随時行い、現在はこれもNotion上にアップされています。
こうした自律学習型のオンボーディングを実践する目的は、一つは他社と同様に短期間でパフォーマンスを発揮してもらうため、もう一つは組織づくりの理想として掲げる「成長プラットフォーム」の実現のためです。自らの成長を促進する仕組みや知見がそろっている、そんな組織づくりを目指しており、その一環としてオンボーディングの在り方を模索しています。