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採用ブランディング ケーススタディ feat. talentbook | #2

世間のイメージを超えて幅広い人材を求めるデル・テクノロジーズ そのための採用ブランディングとは

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 人材獲得競争がますます熾烈になっている現在、転職潜在層までを対象とした中⻑期的な人材獲得活動が不可欠となっている。その核となる活動が、採用候補者に自社や事業を知ってもらうことで、入社に至るまでの関係性を構築する「採用ブランディング」だ。しかし、ブランディングといっても通常の活動と何がどう異なるのか、迷う方も多いだろう。そこで、採用ブランディング支援サービス「talentbook」を提供するPR Tableと、その顧客企業の対談を通じて、採用ブランディングの考え方や実践方法を探っていく。第2回はデル・テクノロジーズ株式会社 ⼈材採⽤部⻑の⽥和健介氏と、同Employer Brand Marketing Lead Japanの三⼝優氏、ならびに株式会社PR Table アカウントエグゼクティブ Managerの菅田一輝氏にご登場いただいた。

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さまざまな人にとっての就職・転職先候補になりたい

──まずはデル・テクノロジーズさんの採用における近年の課題をご紹介いただけますか。

⽥和健介氏(以下、田和) 採用活動は、本来「マーケティング」であるべきだと考えています。母集団形成からナーチャリングなどを経てクロージングするまで、まさに「関係性づくり」が重要といえるでしょう。そう考えると手法としては、初期の頃には間口を広げる「ブランドマーケティング」が、応募から採用・入社に至るまでは「セールスマーケティング」がそれぞれ有効といえます。

 しかし、これまで当社が行ってきた採用活動は、エージェントからの紹介や、ダイレクトリクルーティングによる“一本釣り”が中心でした。必然的に採用チームは、1対1の対話やクロージングは得意でも、もっと手前の、認知領域については経験や知見が十分とはいえない状態にありました。

 設立以降、当社は統合などによって事業領域を拡大し続けています。しかしながら、今でも、創業時から続くパソコンを代表とする製品イメージが根強い。現在は自社製品のみにとどまらず、お客様のビジネスを加速させるあらゆるITソリューションを提案しています。そういった事実は、IT業界にいる一部の方を除いてまだまだ知られていない現状です。当社のイメージをアップデートしてもらうことに苦戦していました。

 近年、グローバルにおいてもクラウドサービスカンパニーと呼ばれる企業が世界を席巻していますが、そのインフラの大部分を当社が支えています。クラウドの時代にあっても、私たちが強みを持っていることをもっと訴求する必要があると感じていました。

 日本は当社全体で見ても採用の重点国の一つであり、目標採用数は高い山でした。採用チームを増強させていましたが、ただ数を増やしただけではパワーゲームにも陥ってしまいますので、必要なスパイス要素として、採用ブランディングが重視されていきました。そうして、4年前に採用ブランディング専任のポジションができました。採用ブランディングが大事とはいっても、専任を置くことは珍しいのではないかと感じます。リクルーターがブランド領域を担うと、どうしても応募数や内定数といったKPIとズレが発生してしまいます。短期指標にはコミットせず、長期的な視点で施策を実行していける採用ブランディング担当者が必要という結論になりました。

⽥和 健介氏
⽥和 健介(たわ けんすけ)氏
デル・テクノロジーズ株式会社 ⼈材採⽤部⻑
富士通で人事業務に携わった後、ゴールドマン・サックス・リアルティ・ジャパンにてM&A、HRデューデリジェンスやアンダーライティングを担当。マイクロソフトを経て、2019年にデル・テクノロジーズへ入社。採用、幹部育成、社内ローテーションの設計などの人事戦略に携わる。日本以外の北東アジア地域のディレクターも兼務。

──御社の採用ブランディングは、どのような方々に向けて、どのようなアプローチを始められたのですか。

⽥和 当初、グローバルの動きとも連動してデジタル広告などを実施していましたが、日本の就職・転職活動は非常にユニークです。多岐にわたる採用プラットフォームがあり、転職エージェントの存在も強いですよね。また、当社では内勤営業やテクニカルサポートなどを多く採用していますが、これらはSTEM[1]をバックグランドに持たない人たちも対象になります。STEM系でない人からは特に、当社は「働く場所」として認知されておらず、働くことも想像されない状態でした。日本独自の戦術が必要だと感じていました。

 同時に、採用ブランドマーケティングの機能は、人事組織からグローバルマーケティング組織へ移管させました。コーポレートとしての一貫したメッセージやプロダクトのマーケティングなどとそろえて活動することが、採用市場においてもブランド力を強くさせると考えたのです。

[1]: 科学(Science)・技術(Technology)・工学(Engineering)・数学(Mathematics)のこと。

三口優氏(以下、三⼝) 私が入社した2021年11月頃は、採用チームの変革の成果もあり、ダイレクトソーシング領域でのKPIは好調で、同業他社にいらっしゃる特定層、あるいは特定の面においては「当社の採用は強い」ともいえる状態でした。一方で、非IT業界出身者や学生などに目を広げてみると、応募意欲の醸成はもちろん、「働く場」としての認識もまだまだ得られていない状態でした。

 私自身、当社のリクルーターから初めて連絡を受けたとき、まず、「パソコンの会社で何をするんだろう」と思ったんです。また、デル・テクノロジーズのことを調べようとしても、求人に関するテキスト情報以外は出てこない。でも、面接プロセスを通して出会う社員の方々は、日本もグローバルも素敵な人ばかり。直に話すと「一緒に働きたい」「こんな仕事をしたい」と、気持ちも前のめりになるんです。デジタル上でも、この体験が必要だと感じました。採用活動におけるコンテンツマーケティングとして、とにかくやれることが多いなと感じましたね。

 また、私は人の心を動かすためには「ストーリー」が重要だと考えています。転職を決めるのも、購買プロセスとある意味同じで、心が動くからだと思っています。近年、スペックだけではモノは売れず、D2Cや個人ブランドが売れているように、ブランドやそれに携わる人のストーリーや思想が共感と熱量を生んでいますよね。採用の場合は特に、名称認知や想起だけではアクションにつながりませんし、転職がより当たり前となった今、無自覚かもしれませんが、長期的な時間軸で「次の働く場所」は検討されていきます。企業のカルチャー、働く環境、一緒に働く人々、手掛ける仕事のやりがいをストーリーに乗せて、受け手がどれだけ想像できるかが、次の一歩につながるのではないでしょうか。talentbookはこうした目的にかなうように思えたので、試してみることにしました。

三⼝ 優氏
三⼝ 優(みぐち ゆう)氏
デル・テクノロジーズ株式会社 Employer Brand Marketing Japan Lead
新卒でNTT Dataに入社後、リクルートキャリアへ転職。日系大手~スタートアップの新卒・中途採用活動の支援に従事する。その後、博報堂の営業としてクライアントのマーケティング課題の解決に携わる。2021年デル・テクノロジーズへ入社し、地域ごとに存在する採用ブランディングアドバイザーの1人として、Japan leadに着任。採用戦略の策定・実行、各施策のローカライズ等を行う。

⽥和 採用ターゲットの母集団形成の考えに関するこのアプローチは、目からウロコが落ちるような出来事でした。これまで、採用の母集団といえば「デル・テクノロジーズに入りたい人」の集まりであり、その中から選抜を経て入社が決まるというスタイルでしたが、ストーリーを軸にした採用ブランディングにおいては、「他業界で活躍している人」や「当社で活躍するポテンシャルを持った人」といった潜在層すべてを母集団とみなし、その中で当社で働く魅力を伝えながら、関係を醸成していけるのではないかと期待しています。IT業界での就業経験の有無にかかわらず、自分のキャリアを自律的に考えている方が「転職しようかな」と感じたとき、すでに当社を「働く場」としてイメージし、転職先候補の一つにも入っている、という状態をつくれるのが理想ですね。従来の強みである、リクルーターを通した1対1のコミュニケーションを武器にした採用活動も継続しつつ、採用市場において当社が選ばれるための長期的なブランド施策を進めていきたいですね。

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この記事の著者

伊藤 真美(イトウ マミ)

エディター&ライター。児童書、雑誌や書籍、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ライティング、コンテンツディレクションの他、広報PR・マーケティングのプランニングも行なう。

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北浦 汐見(キタウラ シオミ)

都内のスタジオに勤務後独立。ポートレート、取材、料理撮影等、都内を中心に活動中。

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市古 明典(HRzine編集長)(イチゴ アキノリ)

1972年愛知県生まれ。宝飾品会社の社員、辞書専門編集プロダクションの編集者を経て、2000年に株式会社翔泳社に入社。月刊DBマガジン(休刊)、IT系技術書・資格学習書の編集を担当後、2014年4月より開発者向けWebメディア「CodeZine」の編集に参加。その後、2017年7月にエンジニアの人事...

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