情報発信・提供の不足に気づかされた
──まずはJX金属様における採用の状況や課題についてご紹介いただけますか。
七宝璃彩子氏(以下、七宝) 特徴的なのは、ここ2〜3年で採用計画数が急拡大しているところです。私が担当している新卒採用では例年50人ほどだったのが、本年度は100人程度に倍増しました。その背景には、好調な既存事業の拡大に加え、新規事業創出にも積極的に挑戦しようとしていることがあります。これ自体はとても喜ばしいことですが、新型コロナによるオンライン化の影響とも重なり、採用活動の在り方を大きく変える必要に迫られました。
山本⻯輝氏(以下、山本) キャリア採用についても同様に、これまで100人弱規模だったのが、昨年は200人規模に拡大し、状況としては新卒以上にキャリア採用が増えています。特に近年では、DXの文脈からIT系・デジタル系の即戦力人材や、新工場の建設に向けたプラントエンジニアの採用も大きな課題です。
新卒採用もキャリア採用も、今まで以上に採用数を増やさなければいけない状況の中、これまでと同じことをしていては、人材の採用は厳しい。素材メーカーとして、専門分野の学生や近しい業界からの転職希望者の方々にはある程度、就職先として意識されていると思いますが、それ以外の潜在層にもPRし、もっと認知を広げていかなければ、必要な人材を採用できないという危機感を持っています。
楠拓也氏(以下、楠) ご一緒し始めた際、事業の継続および拡大のために、新卒採用もキャリア採用も、これまでにない規模が求められている。けれど、それに見合うだけの母集団を形成できていないという印象はありましたね。
七宝 そうですね。まずは「当社に興味を持ってくださる方」を増やし、そこから入社可能性のある母集団を作り上げていく必要があると感じていました。BtoBの素材メーカーということで、認知される機会が少ないという課題があると思います。当社事業と親和性のある分野を専攻していたり、元から業界や仕事内容に惹かれて集まってくださる方ももちろんいますが、それ以外の潜在層へのアプローチも必要です。
また、当社を入社先として認知していると思われる層でも、採用の選考途中で離脱されたり、内定承諾のフェーズで当社を選んでもらえなかったりすることが度々生じていました。それなりに大きなイベントや交流の場を設けたりもしたのですが、自社の魅力や働きがいなどを伝える継続的な情報提供やコミュニケーションが十分とはいえず、いわゆる“エンゲージメント”が十分に醸成されていないのではないかという反省がありました。
山本 キャリアの方は、新卒の方とは求めている情報が異なると感じています。特に業務内容や働き方に関しては、よりきめ細やかな情報提供が必要だと考えています。例えば、DX人材として期待するIT系の採用では、そもそもターゲットになり得る方々は首都圏で働いていることが多いです。ですが、もし当社で働くとなった場合、地方の工場などでのDXプロジェクトや製造プロセスの改善に携わってもらうことになります。そうなると、仕事の進め方や働き方、住環境などが今までとは違う環境で働くことになりますが、そこをイメージしていただくことが難しく、応募や入社を躊躇してしまう方が少なくありません。でも、メーカーのSEだからこそ、できることややりがいもあり、首都圏とはまた違った働き方もあります。そこにフィットする人はいるはずなので、しっかりと情報を開示して魅力を伝えていくことが必要だと思いました。
──新卒採用における文系も含めた「幅広い層への認知拡大と母集団形成」、そして、キャリア採用も含めて採用候補者へのコミュニケーションや情報開示による「エンゲージメントの醸成」が2大課題となっていたのですね。そうした課題感から、採用ブランディングというアプローチを検討されたと伺っています。
七宝 そうですね。2~3年前くらいから課題を感じ始め、「talentbook」を導入したのは、2021年の8月からですね。ご相談した際、どのような印象でしたか。
楠 やはり、情報発信量が不足しているという印象でした。例えば、新卒学生に人気のITやコンサル、商社などは、人気だからこそ情報も潤沢にある。逆にいえば、目に止まりやすいから人気も出るという状況にあります。とにかく情報がどんどん発信され、あふれかえる中で、情報を発信し続けていないと埋もれてしまうのは事実なので、認知されるためには、一定の情報発信の量は必要だと思いました。
七宝 そのようなアドバイスをいただき、改めて自社の情報発信を眺めてみました。1次情報としてはWebサイトも充実させているし、それなりに行っていたつもりでしたが、talentbookのようなWebメディアでの露出はほとんど行っていませんでした。求職者がせっかく検索してくれても、提供されている情報が少なく、もったいないことをしていたなと今では思います。また、コロナ禍でリアルな工場見学や懇親会などができなくなり、仕事や人の魅力を伝える機会が減ってしまっていたにもかかわらず、そこを補完する手を十分には打てていませんでした。
山本 オンラインではなく、リアルな工場見学や懇親会で伝える情報の大切さを実感しましたよね。その意味で、ネットを介しての情報発信の難しさも感じています。というのも、当社の魅力について入社した人にヒアリングすると、「人」という声がすごく多いのです。自分のことを理解して活躍をサポートしてくれる人がいるとか、働いている人に余裕が感じられるとか、人を見て当社を選んでくれているわけです。そこで、自社の採用コンテンツも「人」を打ち出したものを増やしたのですが、社内リソースだけではこれ以上更新頻度を上げるのも難しく、そもそも大量のネットコンテンツの中で当社のサイトに誘導することもできず、いろいろと悩ましく思っていました。
七宝 そんな中、talentbookのタイムリー性を担保しながら記事を蓄積していけるという点、さらには「人」のストーリーにフォーカスするメディアである点に魅力を感じまして、試してみようと思ったわけです。記事の作成においても機動力を発揮いただき、コンスタントな発信ができています。
山本 私は昨年秋より、編集長という形でコンテンツ制作に携わっていますが、採用メンバーに加えてPR Tableさんの第三者的な視点から見たアドバイスがたいへん役に立っています。特に、カスタマージャーニーマップを作成して、いつどの時点でどんな情報が必要なのかマッピングできたことで、年間を通して発信すべき情報を把握できたのはよかったです。やみくもに記事を作成するのではなく、戦略性を持って取り組めるようになりました。