(*) EY Japan、経営改革とチェンジマネジメントに関する市場調査を発表
はじめに:DXの落とし穴
あなたの会社の業務プロセスやシステムの変革で、過去こんな失敗はなかっただろうか。
- 経営層・リーダー層が、総論賛成・各論反対の状態である
- 基本的な戦略やビジョンへの共感や、理解の度合い、対応にばらつきがある
- 「和」が大事で、抵抗やネガティブな感情が起こることが前提になっていない
- 変革の実際的な影響が過小評価されている
- チェンジマネジメントの体制や、関係する社員が担う役割と責任が特定されていない
- プロジェクト関与者について、その時間や貢献が人事評価に反映されていない
- 組織をまたぐ連携がとれていない
- 変革後の定着が進まず、日々の業務に支障を来している
2021年9月にEYが発表した英国オックスフォード大学とのグローバル共同調査[1]では、変化が著しいビジネスの世界において、変革に対して人がうまく適用していくこと、変革の中で起こるネガティブな感情に対してもうまくコントロールしていくことが重要であることが分かった。変革を成功させるには、実際には社員が“どう感じているか”、社員が“どう思うか”といった人のソフト面にも注目しないと、目標に到達できないのである。
注
日本では、これに加えてレガシーシステムや古い商習慣が根づいており、DXのゴールを描けても、既存業務、既存組織への影響が大きく、スピード感のある変革が難しい場合がある。さらに、日本企業は人に業務がひもづいていることが多く、DXを起点とした業務の変革は、結果として社員個人の日々のタスクの変革と同じになる。業務改善が得意な企業であっても、DXは難しく失敗に終わるケースがある。
トニー・サルダナ著(EY監修)『なぜ、DXは失敗するのか? 「破壊的な変革」を成功に導く5段階モデル』では、DX失敗の主な要因の考察として、次の3点を挙げている。
- ① リーダーのデジタルリテラシー不足
- DX推進のためにはリーダーが献身的なオーナーシップを発揮する必要があるが、リーダーが変革に求められるデジタルリテラシーを備えていないことがオーナーシップを発揮する阻害要因になる。
- ② チェンジマネジメント戦略の失敗
- DX推進を掲げても組織がうまく変革できないのは、組織に応じたチェンジマネジメント戦略が執られていない可能性がある。
- ③ プロジェクトの組織体制ができていない
- 中間管理職の巻き込み不足、キーパーソンの権限不足、業務多忙によるプロジェクトへの関与不足など。
次図は、DXプロジェクト推進の要素を表したものです。