本記事は、2022年12月8日にオンライン配信されたセミナー「スタートアップ人事 石黒氏に学ぶ~100人を超えた組織におけるミドルマネジメント強化術」(主催:Unipos株式会社)をもとに構成しています。
石黒 卓弥(いしぐろ たかや)氏
株式会社LayerX 執行役員(HR, PR)
NTTドコモに新卒入社後、2015年1月、60名のメルカリに入社し人事部門を立ち上げ、5年で1800名規模までの組織拡大を牽引。採用広報や国内外の採用をメインとし、人材育成・組織開発・アナリティクスなど幅広い人事機能を歴任。2020年5月、LayerX入社。
社員数の急増を機に、ミドルマネジメント基盤づくりに着手
石黒氏が現在、人事マネジメント担当の執行役員を務める株式会社LayerXは、ソフトウェアテクノロジーをもとに「新たな経済基盤」を作り出すことをミッションとする企業である。2018年に設立され、現在は請求処理や経費精算、稟議申請、そして法人カードなどの支出管理を一気通貫で行うサービス「バクラク」をはじめ、企業活動を支えるコーポレート業務の負担を軽減するソリューションを展開。人々に、日常の業務を通じて「わくわくする働き方体験」を届けることを目指している。
その同社がミドルマネジメントの重要性に着目し、注力し始めたのは、2022年4月のことだったと石黒氏は振り返る。
「直接のきっかけは、社員数が急速に増えたことです。直近の1年間で約50名が130名超と、約2.5倍に増えました。この結果、2022年3月の時点で、2名の担当役員それぞれが、約20名ものレポートラインを抱えることになってしまった。これではとても一人ひとりにきめ細かな対応はできません。たとえば、1on1にしても月1回がやっとという状態で、これは早急に対応が必要だと考えたのです」(石黒氏)
いわゆるマネジメント層は役員のみという、非常にフラットかつシンプルな組織構成をとっていた同社だが、いよいよ規模の限界が来た。そこで石黒氏は同年上半期の目標設定ミーティングで議論を重ね、HRチームのOKRを設定。4つのKR(Key Result)のうち、第1のKRを「8名以上のレポートラインを持つマネジメントメンバーのゼロ化」とした。
一般に、1つのチームでの最適なレポートラインは8名程度といわれており、同社もこの数字を目標に設定したと石黒氏は語る。しかし、同社の場合、設立からまだ4年目とあって組織の変化が大きく、新しいメンバーも次々に加わってきていた。
「どんどん人が増える中で、いきなりそんな目標は無理だと私も含めて誰もが思っていました。しかし、OKRというのは、スタート時点でストレッチした目標をつくること自体が大事なので、あえて8名を固持しました。スタートアップには採用目標を盛り込む企業も多いですが、あくまでマネジメントレイヤーの構築が第一義。そこに焦点を絞るという点についても、メンバー全員と擦り合わせたうえで、OKRを設定しました」(石黒氏)
目標を絞り込み、一点集中して取り組んだ結果、それまでミドルマネージャーが0名だったのが、半年後の2022年10月には一挙に14名の陣容に。また、そのうち9割で、1名が担当するレポートラインを8名以下に抑えることに成功した。社員数が40名増えて135名になったにもかかわらずだ。