人材マネジメントの障壁
HR Tech市場は拡大傾向にあります。人材マネジメントやタレントマネジメントを支援するシステムへの関心も、人的資本経営の広まりをきっかけとして高まっています。
しかし、実際にはシステム導入に踏み切れない企業が一定数存在します。その背景には、そもそも「データが一元管理されていない」という悩みや、人事業務が多岐にわたるため常にリソース不足となっている課題があります。
もちろん、多くの企業では、人事データ整備の重要性を理解しています。しかし、業務や部署ごとにデータが散らばって管理しきれていなかったり、データ取得の方法やタイミングがまちまちだったりして、どこから着手すればよいか分からない状態となっているようです。
また、人事・労務担当者の業務は、採用、研修をはじめ、人事評価や制度、労務管理に至るまで、専門的かつ労働集約型であるものが中心です。法改正や電子申請義務化などやるべきことに追われがちで、人的資本の可視化や人材マネジメントに取り組みたくてもリソース不足で困っているのが現状です。
SmartHRをはじめとするHR Techサービスには、「リソース不足」「データが整理できない・収集できない」などの人事課題を解決することが期待されるでしょう。「人事・労務業務の効率化」や「人事データを収集・蓄積する仕組みの整備」が実現できれば、人的資本や人材マネジメントなどの向き合うべきテーマに割く時間が確保できるはずです。
それ以外にも、HR Techを活用した人事・労務業務の効率化や、人事データを収集・蓄積する仕組みの整備には大きな意味があります。
たとえば、人事異動や配置転換を実施している企業の70%が、その目的を「人材育成」としています[1]。しかし、人事配置を実施している企業のうち29%は成果を出せていないと回答しており、その理由は「データに基づいた客観的な取り組みができていないため」だといいます。
また、人事異動や配置転換で一定の成果を出していると回答している企業でも、「戦略的な取り組みができていない」ことや「データに基づいた客観的な取り組みができていない」ことが課題とされています。
なお同調査で、人材マネジメントにおける経営や人事の課題を尋ねたところ、「次世代リーダーの選抜・育成」「戦略的な人材育成」「適材適所の推進」といった項目に票が集まりました。これらの課題はすべて、人事異動や配置転換の課題と読み取ることができます。