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2017年4月特集「ゼロからITエンジニアを目指す・育てる」| #1

育成・業績を両立する開発プロセスと本人の覚悟が、無職・未経験者を戦力となるIT人材に変える ――【対談】フロイデ 吉谷 愛氏 × iThings研究所 林 優子氏


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 IT人材の不足が叫ばれる一方で、まったくの未経験からプログラミングやシステム開発にチャレンジする若い人々が増えてきている。フロイデ株式会社は、そうした若手を自社で積極的に採用・育成する人材戦略に加え、未経験者を対象にしたアプリケーション開発スクールなどを積極的に展開。わが国の若手IT人材の育成に、大きな力を注いでいる。今回は、同社代表取締役社長の吉谷 愛氏に、オラクルマスターなどの資格教育および人材教育に豊富な経験を持つ、iThings研究所 取締役の林 優子氏がお話をうかがった。

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「食べていく」覚悟が決まれば学習の目的も見えてくる

林 優子氏(以下、林):フロイデ株式会社(以下、フロイデ)では、未経験者を積極的に採用・育成されているとうかがいました。主に、どのような人が応募して来られるのでしょう。

吉谷 愛氏(以下、吉谷):当社では、「無職・フリーターを含む未経験者を1000人エンジニアにする」というミッションを掲げています。そのため、未経験者からの応募が非常に多くなっています。しかし、テストをしてみると、現役エンジニアに負けず劣らずのなかなかのスコアを出される優秀な人も少なくありません。「新卒一括採用の世の中で新卒のカードをうまく切れなかった人」が目立ちますね。

吉谷 愛(よしたに あい)氏:フロイデ株式会社 代表取締役社長。
吉谷 愛(よしたに あい)氏
フロイデ株式会社 代表取締役社長。COBOLからRubyまで、プログラマーとしての幅広い知識と経験を持つ。未経験者を採用し、技術指導で現場のプログラマーを多数育成した実績を活かし、現在、テクニカル講師として活動中。数多くの無職者やフリーターをエンジニアに育て上げ、世に送り出す。ヒューマンアカデミー、デジタルハリウッド、ウチダ人材開発センターなどでの、多数の講師実績がある。
著書に『~短期集中講座~ 土日でわかる PHPプログラミング教室 環境づくりからWebアプリが動くまでの2日間コース』(SBクリエイティブ 刊)がある。

:すると、「最初からIT業界を目指してきたわけじゃない」という人の応募も多いと思います。そうした人たちがプログラミングやシステム開発の道に入ろうとするときに、どういった意識付けや説明をなさっていますか。

吉谷:これまで無職やフリーターだった若い人に、まず必要なのは「このまま行くとどんな未来が待っているか、自分の眼できちんと見なさい」というアドバイスです。そこを甘く考えていると、本当にシビアな人生が待っているからです。

 私は29歳のある日、とつぜん自分が家計を支えることになりました。夫が事故に遭って働けなくなったんです。結婚前もプログラマとしての勤務経験はあったのですが、それでもすぐに選べる仕事といったら、多重派遣の下積みのプログラマくらいしかありませんでした。経験者でもそうなのだから、ましてや職歴のない人には、「今の日本は非常に厳しい状況で、いったん新卒のカードを切り損ねたら大変なんだ」という事実を、最初に認識させています。

 そういう厳しさを理解できたなら、ITというのは困難な現状から抜け出し、自分の望む生活を築いていくのに、非常に有効な方法であり職種だと思います。

:たしかに、本人の努力次第で確実にステップアップしていけるITには、キャリアを積み上げる上でさまざまな可能性がありますね。

吉谷:IT業界で必要とされる人材となるのに、「他人が真似できない圧倒的なプログラミングスキル」が絶対になければいけないわけではありません。むしろ、お客様にどんなニーズがあり、その要望に応えるにはどの技術を使えばよいのかといった「仕事として考える」視点を持つことや、そこからチームの一員として、お客様に価値を提供するサービスを実装できることが重要です。仕事である以上、やはりお客様の期待に応える成果物を提供し、最終的には自社の売上や報酬に結び付けられることが基本要件だからです。常にお客様が正解を持っているわけではないので、なおさらそういう視点が必要になってくると思います。

:人生をきちんと考えてキャリアアップしていこうという人には、いわゆるスーパーエンジニアではなくて、確実にビジネスに貢献できるエンジニアを目指してほしい。

吉谷:ええ。もちろん、スーパープログラマがIT業界で様々なパラダイムシフトを起こしてきたことは事実ですし、これからもそういうプログラマのニーズが増えていくでしょう。ですが、そういうスーパープログラマでなくても「プログラミングやシステム開発を仕事として見られるようになれば、おのずと仕事をする目標も見えてくる」ということを、私は自分が厳しかった時代に体験しました。

 結婚前にプログラマをやっていたころ、私は周囲に認めてもらえなくて、ひがんだり悩んだりしていました。それが夫が事故に遭い、自分が家計を支えることになったとたん、プログラミングが、日々の生活を維持し家族を養うための仕事へと変わりました。自分を認めてほしいなんて漠然とした欲求を満たす手段ではなくなったんです。

:開発プロジェクトでも、ここで自分が逃げたり、しくじるわけにいかないと覚悟が決まると、いろいろなものが見えてきますよね。

吉谷:そうなんです。「この仕事で食べていくにはどうしたらいいだろう?」と考えれば、自然とお客様に目が向きます。お客様からちゃんと報酬をいただくには、お客様が何を欲していて、自分が何を期待され、どんな技術を提供できるのかを真剣に考えなくてはなりません。

 たとえば、お客様からデータベースを構築したいと言われて、自分に知識が足りないと思えば、きっと自発的にデータベースの勉強をしますよね。それでも足りなければ、そういう知見のある方に相談し、あわよくばチームに引き込んじゃう。明確な目的があれば、自ずと学習内容は漫然とではなく体系的になってくるし、それで製品やシステムの質が高まればお客様の満足につながる。それを繰り返しているうちに、いつの間にか周りの人から評価してもらえるようになる。私がまさにそうでした。

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2017年4月特集「ゼロからITエンジニアを目指す・育てる」連載記事一覧
この記事の著者

市古 明典(資格Zine編集長)(イチゴ アキノリ)

うさぎ化してますが、1972年の子年生まれ。宝飾店の売り子、辞書専門編集プロダクションの編集者(兼MS Access担当)を経て、2000年に株式会社翔泳社に入社。月刊DBマガジン(休刊)、IT系技術書・資格学習書の編集を担当後、2014年4月より開発者向けWebメディア「CodeZine」の編集に参加。資...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

工藤 淳(オフィスローグ)(クドウ アツシ)

出版社や制作会社勤務の後、2003年にオフィスローグとして独立。もともと文系ながら、なぜか現在はICTビジネスライター/編集者として営業中。 得意分野はエンタープライズ系ソリューションの導入事例からタイアップなど広告系、書籍まで幅広く。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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