若い人々の意欲や関心を受け止められる仕組み作りを
林:未経験者が入りにくい現在の業界構造をどう変えていくかが、この先のIT人材不足を打開する1つのカギになると思いますが、フロイデの教育戦略の中では、どのようなビジョンを描いていますか。
吉谷:今、フロイデでは「ラボ型IT支援サービス」を推進しています。これはお客様の開発ニーズをおうかがいして、幹部のエンジニアたちで必要な要員を選抜し、チームを編成してアジャイルで準委任契約でその支援に当たるというものです。要件分析・デザイン・提案、自動化含めたクラウドへの環境構築、テスト・設計・実装と、それらのマネジメントまで手がけるワンストップサービスで、お客様と完成後のことも話し合いながらプロジェクトを進めていきます。
この形ですと、お客様と全工程を通じてコミュニケーションが取れるので、お客様の本当のニーズを発見する機会が増えます。また、チームであれば、急にメンバーの1人がリタイアしても、フォローやバックアップの体制を作ることができます。すると、お客様には気持ちにゆとりが生まれ、チームのメンバーに対して寛容になってくださるんです。その結果、お客様、当社のメンバーとも精神的に余裕のあるプロジェクト進行が実現されます。
林:なるほど、このアジャイルチームの中に未経験者やまだ経験の浅い人たちを組み込めば、OJTで開発スキルとビジネスの進め方の両方を教育していけますね。
吉谷:はい。ラボ型開発が広まっていけば、未経験者に対する門戸がもっと大きく開かれると信じています。また、ウォーターフォール型には仕様変更がしにくい、デスマーチが発生しやすいといった問題がありますが、アジャイルをベースにしたラボ型ならこれらをうまく解決できます。
そのために、直近では、自社内にアジャイルをベースにしたエンジニア育成制度を整えています。6月頭には、日本人で唯一の認定スクラムマスタートレーナーの方を福岡に招聘し、幹部を中心に3日間、認定スクラムマスター研修を実施します。
また、それと並行して、客先常駐や一括請負をメインにしている受託開発ソフトウェアハウスに対し、エンジニアの採用・育成からラボ型開発へのシフトチェンジまで、ワンストップで支援する別会社を5月中旬に立ち上げる予定です。
林:最後に、これからプログラミングやシステム構築といったITの仕事に就こう、そのための資格にチャレンジしてみようという人に向けて、何を大切にして進んでいけばよいか、アドバイスをお願いします。
吉谷:「手に職を付ける」ために就職する、資格を取るのも悪くないですが、やはりそこに、いつも「何のために」という意識を持つことが自分にとっても、お客様や周りの方々にとっても、幸福な結果につながると思います。仕事を選ぶきっかけには、たとえば面白いゲームをやって、自分もこんな面白いものを作りたいと思う。そして調べてみたら、ゲームの背後にはプログラミングという技術があると分かり、ならばそれをやってみようといった、いわば感動や驚きや興味があるべきだと私は考えているんです。
林:吉谷さんや私のような立場の者は、そうした心動かされる体験を通じてITの仕事に興味を持った人たちが、未経験というハードルを越えてこちら側に加われるよう、制度や環境を改善していかなくてはいけません。
吉谷:同感です。新卒のカードを切り損ねた人たちに、「失敗したのは自己責任だ」などと言う人たちがいますが、とんでもない。従来の開発方法や組織では落としてしまった、すばらしい可能性や意欲を持った若い人たちを受け入れる仕組みを築いていくことが、私たちIT業界全体に求められていると思います。
林:若い人たちの期待に応えられるよう、これからもお互いにがんばっていきましょう。今日はどうもありがとうございました。
吉谷:ありがとうございました。