荒金泰史氏の前連載「経営人事とエンゲージメント再考」も公開中。
役職定年以降のシニア社員に苦慮するマネージャーが増加
最初に、ある事例を紹介する。
E社の人事Fさんは、同年代の現場マネージャーGさんから、年上部下Hさんのモチベーションダウンについて相談を受けた。Hさんはサービス部門の課長を長く務めた後、1年前に役職定年となり、管理職から外れたばかり。いまは同サービス部門のシニアテクニカルサポートという立場で、後輩社員の指導に当たっている。一方、GさんはHさんの後を引き継いで課長になった。つまり、Hさんはかつての上司であり大先輩なのである。
E社ではちょうど昨年、ジョブ型雇用を取り入れた人事制度に改定したタイミングで、Hさんはこれ以上の昇格をほとんど見込めない状態である。さらに役職定年によって給与は下がり、それほど重要な仕事も任されなくなった。そのため、Hさんのモチベーションが著しく低下。Gさんはそのマネジメントに苦慮しているというわけだ。
いま、日本中にHさんのようにやる気を失ったシニア社員が大量に生まれており、年上部下のマネジメントに悩むGさんのようなマネージャーも増えている。弊社リクルートマネジメントソリューションズの調査では、ポストオフ後、意欲ややる気が下がったままの層(次図の(3))と一度上がって下がった層(次図の(4))が、課長ポストオフの場合にはちょうど半数の50%、部長ポストオフでも44%に上ることが分かっている。
多くの企業が、同様のシニア社員を抱えているのではないだろうか。こうしたシニア社員のモチベーションダウンに対し、人事はどのように働きかければよいのだろうか。