「良く見せる」ことで起こるミスマッチ
採用ブランディングは一般に、「企業の認知度アップ」「競合他社との差別化」「採用力アップ」を目的として行われます。そのため、企業への期待値・ブランドイメージの向上による採用ターゲットの母集団形成という部分のみにフォーカスして、ポジティブな面(条件・待遇・福利厚生など)ばかりを伝え、ネガティブな面(残業時間・離職率など)は見せないようにしてしまいがちです。
ネガティブな面は非開示にして“自社を良く見せよう”とするのは、採用ブランディングにおける大きな落とし穴です。ポジティブな面のみを開示して採用した場合、求職者は期待値が上がりすぎた状態で入社します。実際に入社してみると、思い描いていたイメージとは異なる部分に直面し、「思っていた会社と違った」とミスマッチを感じることになり、離職することも少なからず出てきます。その結果、“コストをかけて獲得した人材が一向に定着しない”という負のスパイラルに陥ってしまいます。
そこで、日本でも「RJP理論」に基づく取り組みに、近年注目が集まっています。RJP(Realistic Job Preview)は「現実的な仕事情報の事前開示」という意味で、自社のポジティブな面だけを見せるのではなく「ありのままをさらけ出す」ことで、入社の先にある“定着”も見据えた採用活動を行います。1970年代にアメリカで提唱されました。
なぜ「ありのままをさらけ出す」ことが定着につながるのでしょうか。次節で解説していきます。
「さらけ出す」ことのメリット
自社のポジティブな面だけを伝えて採用した場合、伝えている“良い条件”にうそはなくても、入社後に上がりすぎている期待値とのギャップを感じた社員はすぐに離職してしまいます。ギャップは企業が抱える課題から主に生じます。ギャップを感じさせないためにも、採用ブランディングのはじめの一歩として、企業はこの課題の明確化から取り組むべきです。
スタートアップ、ベンチャーから大企業まで、どのような規模・知名度の企業であっても課題は存在します。新しく人を雇用する前に、まずは現在いる従業員がどんな不安や不満を抱えているのかに目を向け、「ありのままの姿」と向き合うことが必要です。そこから課題を洗い出すと、次にどう「改善」するべきかが見えてきます。それが、「さらけ出す」採用にとって欠かせない要素になります。