働きがいとは何か
まず、本連載で注目する「働きがい」とは何かを定義しておきましょう。今回は、アメリカの臨床心理学者であるフレデリック・ハーズバーグの理論に基づいて定義します。
ハーズバーグの二要因理論では、仕事の満足度は「動機付け要因」と「衛生要因」の2つによって影響されるとあります。動機付け要因には達成感、承認、仕事そのものが含まれ、これらが満たされることで満足度が高まります。一方、衛生要因には給与、労働条件、職場の方針、対人関係が含まれ、これらが整っていないと満足度は下がります。
つまり、
- 仕事そのものが楽しく、意義を感じられること=やりがいがあること
- 労働環境や人間関係が快適で、ストレスなく働けること=働きやすいこと
この両方が満たされることで、働く人が満足できるということになります。
本連載では、ハーズバーグの二要因理論が両方満たされている状態、すなわちやりがいと働きやすさを両立できている状態を「働きがいがある」と定義します。
働きがいに注目する理由
企業経営において重要な6つの経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報、時間、知的財産)のなかで、特にヒトは最も重要な資源の1つです。人材が活性化し、働きがいを感じながら働いている状態は、組織全体のパフォーマンスを向上させます。
たとえば、「働きがい」が高まると離職率低下や生産性向上につながる可能性があると、厚生労働省による「令和元年版 労働経済の分析-人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について-」の中で触れられています。
また、「働きがい」と共通性の高い概念である「エンゲージメント」に関しても、類似の事項が指摘されています。モチベーションエンジニアリング研究所と慶應義塾大学 大学院経営管理研究科/ビジネス・スクール 岩本研究室による共同研究「『エンゲージメントと企業業績』に関する研究結果」には、従業員エンゲージメントの向上は営業利益、労働生産性の向上に寄与するとの言及があります[1]。
注
[1]: リンクアンドモチベーション「『エンゲージメントと企業業績』に関する研究結果を公開」
つまり、従業員の働きがいを高めることで、結果として事業の成功確率が上がることにつながるといえます。