認知が広がる「退職代行サービス」
退職代行とは、退職したい社員本人に代わってその意志を会社に伝え、退職手続きを完了させるサービスのことです。民間会社の調査[1]によると、「退職代行というサービスを知っていますか?」という設問に、回答者の72%が「知っている」と答えるなど、認知度が高まっています。
退職代行サービスを提供する会社は、大きく分けて弁護士系、労働組合系、その他の民間会社の3種です。弁護士と労働組合は交渉権を持っており、未払い賃金の支払い交渉や退職日の調整などの交渉を行えます。また、トラブルに発展した場合に退職者の代理人になれる弁護士は、比較的利用料が高くなる傾向があります。
退職代行を利用する社員が増えている理由
東京商工リサーチの調査[2]によると、大企業の18.4%、中小企業の8.3%が退職代行業者から退職手続きの要請を受けた経験があります。全体では1割程度の企業が退職代行による社員の退職を経験しており、サービスの認知度や利用が広がっていることがうかがえます。
退職代行サービスを手掛ける会社が公開したデータ[3]によると、退職代行を利用した理由の1位は「上司から各種ハラスメントを受けている」(33.9%)、2位は「上司から退職を止められる」(30.2%)でした。社員が退職について相談したいときに、退職の原因が最初の窓口となる上司自身である場合に退職代行を利用するケースが多いようです。
また、中小事業で退職代行を利用されている理由の1つに、退職に関する会社側の意思決定権が経営者本人にある場合が挙げられます。退職者本人と経営者との間で調整する管理職者などが不在である場合は、退職を申し出ても退職届が受理されない、慰留されるなどでスムーズに退職できない事情があるため、退職代行のニーズがあると考えられます。
社員が退職代行を利用する背景には、会社に退職を申し出ても受理されない、そもそも退職の意思表示が難しいといった状況があるようです。
注
[1]: HRzine「退職代行サービスの利用者の6割が「上司が話しやすければ使わなかった」と回答—エン・ジャパン調べ」
[2]: 東京商工リサーチ「「退職代行」業者から連絡、大企業の約2割が経験 人材確保に「賃上げ」、「休日増」などで対抗」