問題社員対策の最も効果的な方法は「採用しない」こと
問題社員への最も効果的な対策は、「問題社員を採用しないこと」です。社員が組織にもたらす影響は大きく、たった1人の不適切な言動が職場の雰囲気を乱し、周囲のモチベーションや生産性を著しく損なうこともあります。特に「協調性に欠ける」「自分の価値観を職場に押しつける」「指示に従わない」といった社員は、企業秩序の維持に大きなリスクです。
採用時にこうしたリスクを見抜けなかった場合、採用した側の責任が問われます。法律上、雇用契約は双務契約であり、企業には雇用した社員に対して業務遂行に必要な教育・指導体制を整える義務があります。つまり企業には、その社員を採用した以上、職場に適応できるよう支援する責任が生じるのです。もちろん、入社後に問題が判明した場合は適切に対応すべきですが、そもそも「入り口」で見極めることが、企業にとって費用対効果が最も高いリスク回避策です。
そのため、採用基準の明確化、コンピテンシーによる面接、価値観・性格の適合を見る診断ツールの活用など、採用時の精度を高める仕組みづくりが不可欠です。
適切なマネジメントで「問題社員にしない」ことも重要
また、「採用した社員を問題社員にさせないこと」も重要です。採用時には問題がなかったとしても、職場環境や指導体制の不備によって、後に問題行動が表面化することは少なくありません。多くのケースでは、能力不足や業務習熟の遅れ、上司との信頼関係の欠如が原因で、本人が自信を失い、指示に反発したり、消極的な態度に変化したりすることが問題行動の出発点となります。
こうした事態を防ぐためには、日頃の適切な労務管理が不可欠です。明確な業務指示と期待値の共有、定期的な面談によるフォローアップ、成果だけでなくプロセスを評価する姿勢、さらには心理的安全性を確保した職場づくりなどが求められます。また、指導や注意を行った際は必ず記録を残し、後の対応に備えましょう。これらの施策を行うことで、社員には「見守られている」という安心感を与えられ、企業が適切に対応していた履歴を残せます。
社員の問題行動の多くは、早期に適切な支援を行えれば改善可能です。育成や関係構築を怠らず、日常的に気を配ることが、採用した社員を「問題社員にしない」ための防止策となります。