「大手志向」の25卒、堅実でシビアな価値観を持つ
続いて井出氏は、25卒の学生の動向を解説した。6月時点の内々定保有者数は過去最高となった一方で、エントリー社数は3年連続で減少しているという。
「注目したいのは、学生の『大手志向』と『企業選択のポイント』です。25卒の大手企業志向は53.7%と前年比4.8ポイント増加しており、3年ぶりに半数を超えました。さらに、企業選択のポイントでは、『安定している企業』(49.9%)、『給料の良い会社』(23.6%)が増加しており、『自分のやりたい仕事(職種)ができる会社』(28.6%)は減少しています」(井出氏)
また、学生は「福利厚生が充実している」「安心して働ける環境である」などに安定性を感じることも明らかになったという。
井出氏は、企業選びにおいて25卒が堅実な価値観を持っている背景として、彼らが過ごした学生生活があると考察する。
「高校3年生の受験期をコロナ禍で過ごし、入学式も緊急事態宣言中に実施された世代が25卒です。また学生期間中も、物価高などで生活の厳しさや社会の不安定さを感じており、それが堅実でシビアな価値観に表れているのではないでしょうか」(井出氏)
ジョブ型採用を行う企業が増えている
一方で、売り手市場にもかかわらず、学生は就職活動を厳しいと感じているという。その理由は何なのだろうか。
「『先輩と比較して今年の就職活動が厳しくなると思う理由』を聞いた2月の調査では、『採用選考が早期化しているから』という回答が最多となりました。就職活動を長いと感じる学生は年々増えており、自由回答で寄せられたコメントからも『インターンシップに参加しないといけないという圧を感じる』『選考が長期化しており、研究時間が取れない』『金銭的にも精神的にも続かない』といった、早期化・長期化による負担の大きさに関する声が目立ちました」(井出氏)
また、25卒採用では、ジョブ型採用が前年比で約5000コース増加しているのも特徴だという。学生も、文理問わずに選考に応募した割合は増加しているとのことだ。
複線化の流れは、就職活動前のインターンシップにも表れている。1社で複数のコースを設けている企業が増えているというのだ。井出氏は、早期化・長期化・複線化によって困難を増す新卒採用において、企業は学生のキャリア形成をどのように支援すべきなのだろうかと問い、長谷川氏へとつないだ。