大賞を獲った「キャリア形成支援」が目的のインターンとは
最後に長谷川氏は、企業によるキャリア形成支援の参考として、23年に「学生が選ぶキャリアデザインプログラムアワード」で大賞となったDAY TO LIFE(受賞当時社名:株式会社麦の穂)から上田氏と、当時のプログラム参加者で同社に入社した松岡氏をゲストスピーカーとして紹介。2人に、同社のキャリア形成支援を目的としたインターンシッププログラムについて話を聞いた。
DAY TO LIFEと椙山女学園大学との産学連携プログラムは、目的を採用活動にとどめず、学生の「自己理解」「キャリアデザインスキル」向上を目指し、キャリア教育をベースとした事前・事後学習と、夏5日間・秋2日間・春2日間の計9日間にわたる職業体験で構成されている。また、プログラム後も、フォローアップ活動としてキャリアや就職活動に関する個別相談などを行っているという。
長谷川氏は、同社のインターンシッププログラムが学生のキャリア形成を目的としている理由を上田氏に尋ねた。
「当社の人材教育理念である『日本でいちばんひとが育つ会社』とインターンシップの目的が合致したためです。当社の人事制度は、キャリア教育制度を中心としており、自分がどのような状況になっても柔軟にキャリアデザインできるようなスキルを育んでいます。それを学生のみなさんにも提供し、学生の悔いのない就職活動につながることが、当社のインターンシップの意義だと考えています」(上田氏)
「自社の社員の成長」をインターンのKPIの1つに
学生のキャリア形成を目的とする場合、企業がインターンシップを行うメリットが見えにくい問題がある。長谷川氏は、インターンシップの開催によって感じている変化・効果はあるかと上田氏に質問した。
「インターンシップの開催にあたって、3つのKPIを設置しました。1つ目は、経営課題の解決のヒントを見つけることです。プログラムでは、リアルな経営課題を学生に提示しており、若い人の発想・視点で成長のヒントを得ようという姿勢で臨んでいます。
2つ目は、インターンシップに参加した社員の成長を評価する仕組みづくりです。プログラムに社員教育の仕組みを融合し、社員の成長を可視化して人事評価に反映する仕組みを構築しました。これにより、インターンシップの効果を数値で説明できるようになり、社員も成長を実感することでモチベーションが高まります。
3つ目は、企業理念の浸透です。この会社が存続することで、どのような社会にしたいのかという企業理念に社員が向き合う良い機会としています」(上田氏)
上田氏によると、この3つのKPIによる企業価値向上の結果、インターンシップに参加していない人にもこの取り組みが目に留まり、プログラムへの応募数の増加につながったという。
次に長谷川氏は松岡氏に同社のインターンシップに参加した感想を聞いた。
「インターンシップの参加前は、自分の興味や強み、将来どのような仕事をしたいのかといったビジョンが明確でなく、将来への不安がありました。しかし、職場体験やキャリアデザインワークのプログラムを通して仕事理解と自己理解を深められ、上田さんとの個人面談を通して自分のキャリア観が明確になりました。特に教育分野への関心が高まって、大好きなスイーツ業界で、夢や目標を目指してがんばる人をサポートしたいと感じました。今は入社2年目で、ジョブローテーションを利用した人事部門への異動を希望しています。そしてインターンシップ開催時の中心となったり、就活などに悩む学生をサポートしたりしたいと思っています」(松岡氏)
さらに松岡氏は、インターンシップへの参加後は、ゼミやアルバイトなどが就職活動に関わる重要な機会として捉えられるようになったと良い変化を述べた。
長谷川氏は、この松岡氏の変化のように、インターンシップの本来の目的は「学生のキャリア形成支援」だとあらためて強調。DAY TO LIFEのような企業が増えることが重要だと述べて、メディアブリーフィングを締めくくった。