顕在課題へのアプローチ
1つ目の事例では、組織サーベイの結果から浮き彫りになった課題と、それを改善したアプローチをご紹介します。
当社では最小単位の組織を「ユニット」と呼び、そのユニットを束ねる役割を「チーフ」としています。さらに複数のユニットを束ねる役割として「マネージャー」がいます。
また、「スパンオブコントロール」と呼ばれる考え方を用いて、組織の最適人数を設定しています。スパンオブコントロールとは、組織管理のしやすさや組織の効率性・生産性の高さを維持するためには、管理者1名がコントロールするメンバーの人数は5~8名程度とするのが適正だという考え方です。
しかし、本事例の組織は、事業の急成長に伴い組織人数が急激に増えた一方で、1名のマネージャーに10名以上のメンバーがつくという、いわゆる「文鎮型」の組織でした。そのためか、同組織は毎月のサーベイにおいて、「メイン評価者との1on1は役に立っている」「メイン評価者は信頼できる」という、マネジメントと評価に関連する設問項目において数値の悪化が見られました。
この結果を受け、人事が複数のメンバーへのヒアリングを行ったところ、スパンオブコントロールに対する懸念や評価に対する不満の声が上がってきました。
そこで、毎月の組織サーベイをフィードバックする場でマネジメント層と相談し、こうした課題の解消に向けて2つの施策を開始しました。
マネージャーが直接管理する人数を削減
スパンオブコントロールに対する懸念が上がってきた背景には、同組織のマネージャーはユニットのチーフも兼任していたため、管理する人数が多く、メンバー全員に対して目を配り、適切な支援やマネジメントを行うといったことが十分にできないことがありました。
そこでユニットを4つ増やし、チーフも新たに4名を任命して、マネージャーが直接管理する人数を削減しました。さらに、新任および現任のチーフが安心してマネジメント業務を行えるように、人事との月1回の面談を通して信頼関係を築くとともに、マネジメントをするうえでの悩み事に対する相談機会を設け、人事観点からの支援を行いました。
納得感のある目標設定を行うためのワークショップを実施
評価に対する不満の理由には、設定された目標に対する納得感が低いことと、評価基準が不明瞭であることがありました。そこで、人事とマネージャー・チーフが連携し、評価の前提にあたる目標設定の重要性をすり合わせるためのワークショップを開催しました。
ワークショップは、マネージャーとチーフで組織が掲げるゴールを言語化することから始めました。メンバーが納得感の高い目標を立て、目的意識を持って自律的に働ける状態になるには、マネージャーやチーフが目標設定の重要性を理解し、チームの目指すべき状態について自身の言葉でメンバーに説明できる必要があるためです。
ワークショップで言語化されたゴールは、人事からメンバーへ伝えました。そのための場では、どういう情報があれば納得感のある目標がつくれるのか、メンバーに対話してもらいました。同時に、各自で納得感のある目標設定を目指してほしいという期待も伝えました。これらは目標設定に関して、マネージャー・チーフとメンバーとの間で活発なコミュニケーションを促す狙いがあります。
さらに、これら一連の施策がどのような効果につながったかを検証するために、メンバーに事後アンケートを行いました。アンケートで収集したコメントは、前述の人事とマネージャー・チーフとの月1回の面談の際に、組織の状態変化や課題を深掘りしていく材料にもなりました。
こうして組織サーベイから見えた課題に対し、1次情報をもとにマネージャー・チーフとともに改善に取り組めたことが、組織サーベイのスコア改善につながっています。