IT業界におすすめのエンゲージメント向上対策
IT業界の企業がエンゲージメントを高めるために不可欠なのは、階層の間にある「不和」「不満」を解消することです。そのためにはまず、「経営陣と部長」「部長と課長」の間にある問題解決に努めましょう。
考察の4でお伝えしたとおり、IT業界の管理職はプレイヤー化してしまう傾向にあります。必ずしもプレイングマネージャーが悪いわけではありませんが、マネージャー目線を持ち合わせていないプレイヤー目線のままでは、管理職として十分に機能することはできません。いかにプレイヤー目線から脱却させ、マネージャー目線へ引き上げられるかがポイントになってきます。
では、管理職にマネージャー目線を持ってもらうにはどうすればよいでしょうか。
まず取り組むべきは、経営陣と管理職の「対話の機会」を設けることです。エンゲージメントが低い企業では、「経営陣 vs 管理職」という対立構造が発生しがちです。この対立構造を解消するためにも、「経営合宿」や「担当役員との1on1」によって、経営陣と管理職がそれぞれの視界を共有することが重要です。
- 経営合宿
- 年度初めや期初など、事業戦略や組織戦略を立案するタイミングで経営合宿を開催することをおすすめします。部長をはじめとする管理職を巻き込んで、「経営陣と一緒に戦略を立てる」経験をさせることが重要です。経営合宿で避けたいのは、経営陣が一方的に発信するだけで、参加している管理職が傍観者になってしまうことです。管理職に積極的な発言を促し、「自分も戦略を立てる一員である」という当事者意識を醸成するのがポイントです。
- 担当役員との1on1
- 各管理職と担当役員の1on1を実施することをおすすめします。1on1では、各管理職のパーソナリティを把握しながら、互いの信頼関係を構築できます。信頼関係を構築するためには、管理職や役員といえども、基本となる自己開示と相互理解する姿勢が重要です。自己開示のコミュニケーションフレームとしてよく使われる「ジョハリの窓」などを参考にしながら、まずは自己開示から進めてみてください。
- なお、このような施策を進めるうえでは、人事部の関与も重要になってきます。経営合宿の企画・運営は人事の腕の見せどころです。担当役員と管理職の1on1も、単に「場」を設けるだけでなく、間接承認を促すために人事が「つなぎ役」になったり、人事から管理職に声をかけて、間接承認したりする動きも効果的です。
IT業界のエンゲージメント向上ストーリー
最後に、IT業界の企業でエンゲージメントが向上した例をお伝えします。ぜひ取り組みの参考にしてください。
ITサービス企業のA社は、業務の仕組みが整っておらず、労働時間も長く、エンゲージメントが低い状態が続いていました。そこで、オペレーションが安定し、1人ひとりの業務負荷が軽くなればエンゲージメントも上がるだろうと考えていましたが、その見込みは外れます。オペレーションが整って残業時間が減っても、エンゲージメントは上がりませんでした。
そんなA社のエンゲージメントが向上したきっかけは、階層間の対話機会を増やしたことです。具体的には、経営陣が従業員と直接対話するタウンホールミーティングや、部長と課長の間で1on1ミーティングを実施しました。また、管理職がチーム全体に課題を共有し、メンバーに対して目標・ゴールをコミットするようにしました。こうした施策によってエンゲージメントが向上し、管理職が細かい指示を出さなくても、メンバーが自ら的確に動ける組織へと変貌を遂げました。
おわりに
IT業界のエンゲージメントは他業界に比べて高い水準にありますが、管理職のスコアなど、エンゲージメントの低い企業の課題が顕著に表れていました。管理職のエンゲージメント向上を図るためには、経営陣と管理職の「一枚岩化」を推進し、強固な組織をつくっていくことが求められます。
次回は、小売業界のエンゲージメント傾向や、エンゲージメント向上の具体策について解説します。