考察——管理職のエンゲージメントが低い原因とは
分析結果を踏まえ、IT業界のエンゲージメントの傾向を次のように考察しました。
- IT業界は他業界に比べ歴史が浅く、相対的に勤続年数も短い業界です。それゆえ、一緒に働く仲間や仕事内容を重視する傾向にあり、「自ら事業を創出していこう」というチャレンジを促す風土を求める人が多いことが推察されます。
- エンゲージメントが低い企業の管理職は「人的資源(人材の魅力)」の満足度が低く、自社の人材に魅力を感じていないことが分かります。
- エンゲージメントが低い企業の管理職は、理念・戦略の浸透度合いを示す「理念戦略」の満足度が低く、「自社の理念・戦略が十分に浸透していない」と感じていることが分かります。
- 上記の2~3から、IT業界でエンゲージメントが低い企業は、管理職が自社の人材や理念・戦略に不満や不足を感じていることがエンゲージメントの低下要因になっていると推察されます。IT業界では、優秀なプレイヤーが管理職に登用され、プレイングマネージャーになるケースが多く見受けられます。こうしたプレイングマネージャーは、自身のスキルが高いがゆえにスキルが足りないメンバーの存在や、理念・戦略が実現できていないことに対して不満を抱いているのではないかと考えられます。
IT業界の管理職は何を重視しているのか 見えてきた役職間のギャップ
次図は、IT業界においてエンゲージメントに影響を及ぼしやすい項目のベスト5を抽出した表です。IT業界で働く人が何を重視し、組織に何を求めているのかが表れているといえます。
部長のランキングを見ると、「業務目標や計画の共有」「メンバーの目標達成意欲」など、メンバーの目標に関する項目がエンゲージメントと相関が高いことが分かります。課長を見ると、「戦略目標の発信と伝達」「戦略目標への納得感」など、会社の目標に関する項目がエンゲージメントと相関が高いことが分かります。
このことから、エンゲージメントの低い企業では、部長と課長の間に「部下が目標を理解していない」「会社が戦略・目標を伝えてくれない」といった「ギャップ」が生じていることが推察されます。つまり、IT業界でエンゲージメントの低い企業は、「経営陣と部長」「部長と課長」「課長とメンバー」、それぞれの間に不満の要因があると捉えられます。