日本企業の強み「OJT」を活かして、サステナブルキャリアは実現できる
——石山さんは、社員個人のサステナブルキャリアを実現する方法として、「OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング:日常の職場における学習)と関連付けた、新しい能力開発・キャリア形成の再構築」を勧めています。これは、どのように実践すればよいのでしょうか。
ご存じのとおり、OJTは日本企業の強みの1つです。しかし、従来のOJTは暗黙知が多く、たとえば飲み会や喫煙所など、閉じた空間の中だけで知見が流通する実態がありました。会社に異動を命じられるまま、さまざまな部署を経験するという、無限定性を前提としている点も従来のOJTの課題です。
そこで、社員個人が描くサステナブルキャリアを明確化して、社員の主体的な意思を尊重しながら必要な経験を積める部門に配属したり、専門知識を学べるプロジェクトにアサインしたりすることが、これからのOJTの理想です。もっといえば、専門性の高い知識を社外の学習機会を活用して学ぶことも必要になるでしょう。
そして、こういった社員個人のサステナブルキャリアに合わせた配属や学習支援を行うときは、HRテクノロジーの活用が欠かせません。
——どのように活用するのでしょうか。
現在、多くの企業でタレントマネジメントシステムやeラーニングシステムが「人事部のためのシステム」になってしまっています。人事が社員の誰をどこに配置するか、組織体制や研修を考えるために活用していることが多いのではないでしょうか。
これからは、社員自身のサステナブルなキャリア形成にも役立つものであるべきです。そのためには、社外活動の経験やスキル、副業に関する内容、社内の目標以外のキャリアビジョンといった、社内の学習だけに閉じない情報を従来の社内情報に付加し、HRテクノロジーを使って可視化する必要があります。たとえば、「ボランティアで3ヵ月こんな活動をした」という情報も、サステナブルキャリアを描き、形成していくうえでは重要です。