帝国データバンクは、国内企業の人手不足動向について調査・分析を行った。
正社員不足の企業は53.4%、非正社員では30.6%と高止まり
慢性化する人手不足は、さらに深刻なステージを迎えているという。2025年1月時点における、正社員の人手不足を感じている企業は53.4%。コロナ禍(2020年4月)以降で過去最高に達した。1月としては、これまでで最も高かった2024年(52.6%)を上回り、4年連続の上昇となった。
非正社員の人手不足割合は30.6%となり、1月としては2年ぶりに3割を上回り、過去4番目(過去最高=2019年、34.4%)の水準だった。正社員においては人手不足が一層深刻になりつつあるとともに、非正社員の不足感も高止まりで推移している。
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正社員:SE不足が顕著な「情報サービス」が72.5%でトップ
正社員の人手不足割合を業種別に見ると、「情報サービス」が72.5%で最も高かった。前年同月比4.5ポイント低下だったものの、顕著なシステムエンジニア不足が影響し、依然として業種別トップの状況が続いている。
また、「建設」も70.4%と同じく7割を上回った。昨年4月に時間外労働の新たな上限規制が設けられた“2024年問題”から、間もなく1年が経過しようとしている中で、企業からは「仕事量はあるが、働き方改革や人件費上昇の影響で、単に受注すればいいという考えにならない」「職人の高齢化、若手の育成不足のため協力業者が少なくなっている」などの声が寄せられた。
その他、「メンテナンス・警備・検査」が66.5%、「運輸・倉庫」が66.4%など、8業種が6割台で続いた。
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非正社員:「人材派遣・紹介」がトップ、「飲食店」は大きく低下
非正社員の人手不足割合は「人材派遣・紹介」が65.3%で最も高かった。業種別トップとなるのは2021年6月以来、3年7ヵ月ぶりだという。国内全体が深刻な人手不足の中、派遣人材によって労働力を補う動きが活発化したことが背景にあると同社は述べる。企業からは「人材の引き合いが多くなり、それに対して提供が追い付いていない」といった声が寄せられた。
これまで非正社員において人手不足が顕著だった「飲食店」は60.7%、「旅館・ホテル」は50.0%と、それぞれの人手不足割合が大きく低下したことによって順位が変動。両業種とも就業者の多くを非正社員が占める中で、コロナ禍で落ち込んだ非正社員の数が足元で回復していることや、DX化の浸透、スポットワークの普及などが進んできていると考えられるという。
加えて、百貨店やコンビニエンスストアなどの「各種商品小売」は56.8%、食品スーパーをはじめ野菜・鮮魚など各種食品を扱う「飲食料品小売」は54.5%など、個人向けの小売・サービス業を中心とした労働集約型の業種が上位だった。
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「人手不足企業」の賃上げ見込みは68.1%、全体を上回る
帝国データバンクが2月20日に発表した「2025年度の賃金動向に関する企業の意識調査」では、2025年度における正社員の賃上げ実施を見込んでいる企業の割合は、61.9%だったという。その内訳を雇用過不足感別に比較すると、人手不足を感じている企業では68.1%に上り、全体を大きく上回った。その他、「適正」が58.3%、「過剰」が51.9%だった。
過去の推移を見ると、2020年度以前は6割をやや上回る水準で推移していたものの、コロナ禍による業績悪化で人件費の上積みが難しくなったことが影響し、5割台に低下。そうした中、2023年度は飲食料品や日用品の値上げが相次いだことを受けて賃上げ機運が高まり、79.8%まで上昇している。2025年度の見込みは、前年度比2.2ポイント増の68.1%となり、足元ではコロナ禍以前を上回る賃上げ機運が生じているだろうと同社は述べている。
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人手不足に関連した、賃上げに関する企業の声
人手不足から賃上げすることに対し、自由記述のコメントでは次の回答が寄せられた。
- 社会保険料:賃金を上げているが、社会保険料などで結局20%以上も手取りが減るので、社員たちから「給料が上がらない」と思われてしまう(スポーツ用品小売業、北海道)
- コスト高:人材確保のため、非正社員の賃金上昇を見込んでいるが、正社員の賃上げには至っていない。運賃、保管料、光熱費などの各種コスト高騰によって、利益確保が難しい(米麦卸売、福島県)
- 価格転嫁:今までの給与水準では採用活動が非常に難しくなってきている。給与水準の引き上げを行いたいが、取引先への価格転嫁の交渉が進まず、ベースアップの財源が確保できていない(一般貨物自動車運送、岩手県)
- 初任給:高校生含めた新卒採用が非常に厳しい。初任給を上げても反応が芳しくなく、入社希望者が増えないのではないか(金属プレス製品製造、福島県)
- 転職:人手不足の中、働き手が仕事をより厳しく選ぶようになり、不満があれば簡単に転職してしまう。このまま何も手を打たないと、高い時給の仕事ばかりに人手が集中してしまう(電子応用装置製造業、北海道)
- 中小企業:大企業は業績の下支えで大幅な賃金アップも可能だと思うが、中小企業は業績の向上が望めない中、従業員の生活を支えるため少しでも賃金アップを模索していきたい(印刷・製本・紙工機械製造、埼玉県)
- 最低賃金:最低賃金の上昇によって非正社員から年収130万円を超えないよう労働時間を調整したいとの要望があり、そのため働く時間を少なくせざるを得ない。人手不足の傾向が続く要因である(印刷業、秋田県)
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