
経営マターとして人事領域を管掌
——長澤さんのこれまでのご経歴について教えてください。
新卒でWebマーケティングのベンチャー企業に入社し、営業として3年半くらい勤めました。その後、高校の先輩である宮下(ワンキャリアの創業社長)に誘われて、取締役COOとして入社。現在はCOO兼CHROという肩書きですが、CHROというポジションを設けたのは2年前になります。
私が入社した2014年は創業期で、社員は3~4人。その後も、ベンチャーらしく取締役メンバーが「なんでもやる」という体制で事業を拡大してきました。上場の準備にあたって管理部門が必要なときには、CFO的なポジションを担ったこともありました。

長澤 有紘(ながさわ ありひろ)氏
株式会社ワンキャリア 取締役副社長 執行役員COO兼CHRO
京都大学大学院農学研究科卒業。2011年にIT系ベンチャー企業に入社。WEBマーケティング業務、セールス業務に従事した後、2014年に株式会社トライフに入社。2015年よりワンキャリアの取締役COOとして、マーケティング、開発、営業の各部門の事業責任者を歴任した後に、2019年に管理部門管掌取締役に就任。2020年に取締役副社長に就任、2023年より現職。
その中で、人事機能や採用にも経営マターとして長年取り組んできました。ベンチャー企業の人事の仕事は、8割が採用です。社員30名くらいの規模のころは、私が採用担当としてすべての中途社員の書類審査と面接を行っていました。
2021年に上場した時点でも正式な人事部門は存在せず、私を含めてできる人が兼任している状態でした。2022年に、社員数が100名規模になったタイミングで、人事機能を経営から部門に移管し組織的に再現性を持って運営していくため人事部門を設立。その翌年に私がCHROに就任しました。
——創業期から人事領域を管掌されてきたのですね。人事機能を長澤さんが担うことになった背景は?
採用の最終決定は社長です。人数の少ないベンチャー企業の場合、社長に近い取締役が候補者を絞ってしまって、社長がGOを出してから現場のメンバーと会うほうが効率がよいのです。
また、現場は日々の業務に追われていて採用に避けるリソースがないため、“何でも屋”の取締役が担う必要がありました。中途採用に関してはこのやり方が2019年ごろまで続いていました。
——では、なぜあるタイミングでCHROというポジションを置いたのでしょうか。
逆にいえば、それまでCHROというポジションをつくる必要がなかったのです。CHROに限らず、CxOという役職は経営の役割の一部をその人に委譲するためのものです。ポジションに適した人がいない場合、わざわざ役割を切り出さず、経営陣の業務として進めればよいわけです。
弊社の場合は、人事部門をつくり、さらにCHROを設置することで、社内外に「これから人材への投資に注力していく」意思表示をしたいという狙いがありました。人事組織に関する発信を外に向けて増やしていきたいタイミングだったので、私がCHROという肩書きで「人事の人間」として話すことに意味があると考えての就任でした。