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日本企業はスキルベース組織を導入すべきか?「日本型スキルベース」のススメ | 第2回

スキルベースと人材育成—日本企業は「キャリア面談」を「スキルに関する対話の場」へと変革せよ

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 日本企業がスキルベース組織を導入する場合、最初に適用すべきは人材育成・キャリア開発の領域であろう。目的が明確だし、企業・従業員の双方とも活用イメージが湧きやすい。また、制度として定着している上司との「キャリア面談」を通じて行えば、スキル情報の収集やアップデートも無理なく実践できる。そこで、日本企業はキャリア面談を「スキルに関する対話の場」へと変革し、「部下が目標とするキャリアとスキル習得の関係について、上司と部下が同じ目線で話し合う場」とすることを提案する。次世代のキャリア面談の実現を契機として、今後は「日本人も自らキャリアを考え、自ら学習する時代」の到来に期待したい。

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「スキルベース組織」について解説した前回(第1回)の記事

日本企業の人材育成の“悪癖”とは——スキルベースが突破口に

 スキルベースによる人材育成・キャリア開発とは、職務に必要なスキルを明確に定義し、従業員ごとのスキル保有状況やスキルギャップを可視化したうえで、個別に最適な育成を行う手法である。本連載では、企業人事の3つの領域(①人材育成、②労働市場、③雇用)におけるスキルベース組織の導入を論じていくが、その順番が非常に重要であり、筆者としては「①人材育成」の領域から導入することをおすすめしたい。

 その理由には大きく2つある。1つ目は、導入の難易度である。スキルベース組織の導入は難易度が高いため、できるだけソフトランディングしたい。その点、人材育成・キャリア開発への適用は目的が明確だし、企業・従業員の双方とも活用イメージが湧きやすいことから、比較的導入しやすい。2つ目は、導入の意義である。次に述べる日本企業の人材育成の実態を鑑みれば、スキルベースを導入する意義は大きい。

 これまで日本企業(特に大企業)では、新卒一括採用で従業員を雇用して新人導入研修を数ヵ月間実施した後は、課長研修・部長研修といった階層別教育を行うのみで、各職場での育成に任せていた。職場での育成もOJTという名の「現場任せ」が主流であり、各従業員にパーソナライズされた体系的な人材育成とは程遠かった。高度成長期まではそのような画一的な育成が奏功していた面もあるが、現在では完全に時代遅れである。

 今の時代、スキルの習得と発揮といった能力開発が見込めない企業は、若者から敬遠されてしまう。何を学ぶべきか誰もアドバイスしてくれない、学んでもそれが活かせない企業では、自発的に学ぼうという意欲が湧かず、従業員エンゲージメントや働く意欲の向上は見込めない。その結果、「学ばない社員」が大量に生まれてしまう。

 以上が日本企業の人材育成の現状であろう。もはや「悪癖」とも言える組織文化である。この課題解決として、筆者はスキルベース組織の導入を日本企業へ強く勧めたい。日本企業の悪癖を打破する可能性を秘めているからだ。

人材育成におけるスキルベースの導入ステップ

 では、人材育成・キャリア開発の領域において何から着手すべきだろうか。最先端のスキルベースシステムをすぐに導入すべきだろうか。答えは否である。

 まず企業がやるべきことは、「体系的な能力開発プログラムの設計」である。今の時代、何事もアジャイル的にトライ&エラーを繰り返しながら進めたいところだが、基本的な考え方だけは最初にきちんと論議して、その後もブレずにいきたい。ある意味、いきなりアナログな作業であるが、こればかりはAIも作成してくれない。人間がやるべき仕事である。

 体系的な能力開発プログラムの設計といっても、それほど難しいことではない。多くの大企業では既存の育成体系があるのでそれを活用すればよいし、これを機にシンプルなプログラムを新設してもよい。

 また最初に、このプログラムの対象となる部署や職種を明確化しておくことも大切である。私のおすすめは、デジタル・ITの分野であり、それが定着したら他の専門職(財務やマーケティングなど)へと広げていきたい。

 次にやるべきことは、スキルの定義である。結論からいえば、これはスキルテック企業やコンサルティング企業から入手することをおすすめする。特に最初の段階では、「自社独自のスキルも定義しよう」と欲張らずに、既存のスキルタクソノミー(スキルの一覧表)を活用するのがよいであろう。とりわけ、デジタル・ITの分野であれば、世界的な標準や経済産業省が2022年に策定した「デジタルスキル標準(DSS)」に基づくものがおすすめである。

 特にDSSは、ビジネスアーキテクト、デザイナー、データサイエンティスト、ソフトウェアエンジニア、サイバーセキュリティという5つの人材類型ごとに詳細なスキル定義がなされており、今後日本ではこれが事実上の標準となるのでぜひ利用したい。

 また、デジタル・IT分野は人材の流動性が高いため、外部労働市場(中途採用)からの人材確保の観点からも、自社独自のスキル定義を極力少なくして、標準的なスキル定義を利用するのがよいだろう。

 そして、やっとシステムの導入である。現在、スキルテックは急速に技術革新しており、まさに日進月歩の分野である。たとえば、以前は陳腐だった「次のキャリアを提示する」といった機能も、今ではAIを活用して精度の高いキャリアの提示が可能だ。また、「従業員が目指したいキャリアと現在保有しているスキルとのギャップを提示してくれる」といった機能も、今や当たり前になってきた。むしろ今では、「これまでの延長線上にはない、今まで考えたこともなかったキャリアの候補を提示してくれる」という機能まで登場している。また、日々の学習との連動も重要であり、従業員は自らのスキルの強み・弱みを客観的に把握して、それに応じたeラーニングや外部講座を推奨してくれるような機能も求められる。

 こういったシステムを選択する際に、筆者が勧めたい機能は特にない。各企業が予算と相談しながら、最新技術を用いたシステムを導入すればよいと考えている。むしろ筆者が気になる(心配になる)のは、キャリアの提示といったフロント機能ではなく、スキルの収集や保守といったバックグラウンドの機能である。次にそのことについて述べたい。

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日本企業はスキルベース組織を導入すべきか?「日本型スキルベース」のススメ連載記事一覧
この記事の著者

角田 仁(ツノダ ヒトシ)

1989年に東京海上火災保険に入社。主にIT部門においてIT戦略の企画業務を担当する。2015年からは東京海上のIT企画部参与(部長)および東京海上日動システムズ執行役員。2019年、博士号取得を機に30年間務めた東京海上を退職して大学教員へ転じ、名古屋経済大学教授や千葉工業大学教授を歴任した。現在...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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