この調査は、ITRが2017年8月17日から9月3日にかけて実施された。同社の顧客企業や主催セミナーへの出席者、ならびにWeb調査の独自パネルメンバーなどのうち、国内企業のIT戦略・IT投資の意思決定に関与する人にWeb経由で回答を呼びかけたところ、2554人から有効な回答を得た。
IT予算を増額した企業が3割を超える
定点観測として行われているIT予算については、2017年度(2017年4月〜2018年3月)について、前年度から「増額」とした企業の割合が34%となり、前年調査の2016年度の値(28%)から大きく上昇し、3割を超えている。「減額」とした企業の割合は、前年調査の結果からさらに下回り、2001年の調査開始以来でもっとも低い水準になったという。さらに、2018年度(2018年4月〜2019年3月)に向けた見通しでは、2017年度と同様であり、総合的にIT予算の増額傾向は継続すると予想されている。
IT予算の増減傾向を指数化した「IT投資増減指数[1]」を見た場合も、2016年調査時の予想値「1.73」を大きく上回る「2.58」となり、2009年度以降では最高の水準となった。
AI、IoTの導入、働き方改革は既存IT部門の関与度が低くなると予想
また、クラウドサービス、サイバーセキュリティ、人工知能(AI)、IoTなど、昨今課題となっている7つのテーマについて、推進役を担うべき部門や組織を問うたところ、いずれのテーマも既存のIT担当部門が推進役を担うべきだという回答がもっとも多くなった。特に、「クラウドサービスの導入・利用拡大」と「サイバー・セキュリティへの対応」においては、50%を超える高い割合を占めることが明らかになったという。ただし、人工知能(AI)、IoTの導入、デジタル・ビジネス、働き方改革といったテーマに関しては、既存のIT部門が中心的な役割を担うべきとした割合が半数を割り込み、相対的に見て、既存のIT部門による関与度が低くなることが予想されている。
「AI/機械学習」と「運用自動化」に対する高い投資意欲
製品/サービスの投資意欲を確認するために、110項目について現在の導入状況と今後の投資意欲を問い、その回答をもとに、導入済み企業における次年度に向けた同士額の総額傾向を「投資増減指数」、未導入企業における次年度に向けた導入意欲の度合いを「新規導入可能性」として、それぞれ算出してマッピングしたのが下図になる。
この図からは、各種OSや基盤系ソフトウェア、管理ツールなどを含むOS/ミドルウェア分野では「AI/機械学習」と「運用自動化」の項目が前年からの高い投資意欲をさらに伸ばし、新規導入可能性および投資増減指数ともに上位になった。また、調査項目に新しく追加された「ディープラーニング」と「ブロックチューン」は新規導入可能性において、投資意欲が高いことが明らかになった。
これらの調査結果が含まれたレポートの詳細は、11月中旬に発売が予定されている「国内IT投資動向調査2018」に掲載されている。
注
[1]:指数の定義は、2015年度までは「20%以上の減少を−20、20%未満の減少を−10、横ばいを0、20%未満の増加を+10、20%以上の増加を+20として積み上げて回答数で除した値」。2016年度以降は「20%以上の減少を−20、10%から20%未満の減少を−15、10%未満の減少を−5、横ばいを0、10%未満の増加を+5、10%から20%未満の増加を+15、20%以上の増加を+20として積み上げて回答数で除した値」。