8割の学生が影響を受けた「採用ホスピタリティ」とは
——まず、「採用ホスピタリティ」とは、どのような考え方なのでしょうか。
私たちが定義する「採用ホスピタリティ」とは、「選考フェーズにおいて、就活生が企業から受ける対応やおもてなし」を指します。採用担当者だけでなく、面接官や廊下ですれ違う社員など、企業に属する1人ひとりの対応も含まれており、説明会から面接まで、学生と企業が接点を持つすべての場面が対象です。

齊藤 琢真(さいとう たくま)氏
みん就株式会社 商品企画部 マネージャー
福井県出身。2018年 株式会社リクルート入社。中途人材紹介事業の法人営業を担当。2023年ポート株式会社入社。リスキリング事業・アライアンス事業にて営業・企画職を経験。2024年4月より、みん就のPMIを担当。2024年10月 みん就株式会社 商品企画部 マネージャーに就任。みん就ランキング・各種ブランディング施策を担当。
——では、その採用ホスピタリティが、学生に与える影響を教えてください。
今回の調査では、学生の79.9%が企業のホスピタリティによって志望度が「上がった」と回答しました。また、企業のホスピタリティを重視するかという質問に対しても、88.1%が「重視する」と答えています。
これらの数字から、学生の意思決定において、採用ホスピタリティがきわめて重要な要素であることが分かります。

——学生は、企業の対応を意識的にチェックしているということでしょうか。
意識的に見ている学生は少ないと思います。特に面接前の学生は、「いかに自分をアピールするか」と集中しているため、企業の対応を細かく見る余裕はないはずです。ただ、そうした緊張状態の中で「面接がんばってくださいね」と声をかけられたり、笑顔で挨拶されたりすることが、リラックスにつながります。だからこそ、印象深い出来事になり、志望度を左右する要因になるのではないでしょうか。
「選考の外」のコミュニケーションが学生の心をつかむ
——なるほど。「学生が嬉しかった対応」について、もっと詳しく教えてください。
最も多かったのは、「受付や社員の方が笑顔で迎えてくれた」(41.1%)でした。次いで、「採用担当者や社員が気さくに話しかけてくれた」(31.4%)と続きます。フリーコメントでは、「廊下ですれ違った社員が、挨拶をしてくれた」「面接の前に励ましの言葉をもらった」といった回答が目立ちました。

ここから見えるのは、学生は面接官とのやり取りだけでなく、選考の“外”のコミュニケーションを重視しているという点です。
圧迫面接など、面接中のネガティブな体験が学生の志望度を下げることが当たり前の認識になったいま、多くの企業が面接官の対応を改善しています。つまり、面接中の印象は他社との差がつきにくくなっているのです。
だからこそ、採用に直接関わらない社員の自然な振る舞いが、企業のリアルな「社風や職場の雰囲気」を伝えるうえで、より大きな影響力を持っていると捉えられます。
——面接官以外の社員の対応が、他社と差別できるポイントになるのですね。
そのとおりです。最近の学生は、将来の上司や同僚になるかもしれない人たちがどのような人なのかをとても気にする傾向にあります。
当社が運営するみん就の口コミでも、社風に関する投稿は多いです。企業の公式な説明だけでは分からない「本当の企業の姿」を、社員1人ひとりの対応から感じ取ろうとしているのでしょう。
——嬉しかったことに関するエピソードを見て、特に参考にできそうなポイントはありますか。
「人事や社員が、学生自身のキャリアについて親身に相談に乗ってくれた」という声は印象的でした。
コロナ禍を経験した今の学生は、就職活動に関する縦や横のつながりが希薄になりがちです。そうした迷いやすい状態の中で、希望の業界や会社で働いている先輩からもらったフラットな意見は、貴重なアドバイスになります。これによって、その会社への印象や志望度がとても上がったという声は多く見られました。