HR戦略との融合:組織文化を経営の要に
組織文化のデザインは、単なるソフト面での施策ではありません。それは、企業の競争優位性を確立し、持続的な成長を実現するための重要な経営戦略と位置付けられるべきです。そして、その実現のためには、組織文化のデザインとHR戦略が密接に融合している必要があります。
たとえば、挑戦を奨励し、失敗を許容する革新的な組織文化を目指すのであれば、評価制度も挑戦を促すものでなければなりません。人材育成は、自律性や創造性を育むプログラムに重点を置くべきです。採用戦略は、多様なバックグラウンドを持つ人材を積極的に受け入れる方向へとシフトすべきでしょう。これらはすべて、HR戦略の中核をなす要素です。
HRチームは、単に各制度を個別に設計するだけでなく、それらが全体としてどのような組織文化を醸成するのかという視点を持つ必要があります。そして、その組織文化が、企業の経営戦略やビジョンとどのように整合しているのかを常に問い続けなければなりません。
HRチームがエフェクチュエーションのアプローチを採り入れるということは、現状のリソースを最大限に活用し、許容可能な損失の中で試行錯誤を繰り返し、多様なステークホルダーを巻き込みながら、予期せぬ出来事を機会に変え、そして自らが未来を創造していくことを意味します。これは、まさに不確実性の高い現代において、企業を成長へと導く経営そのものの営みに他なりません。
したがって、HRによる組織文化のデザインは経営そのものであると言い切れるのです。HRチームは、単なる管理部門ではなく、企業の未来をデザインする戦略的なパートナーとして、その役割を最大限に発揮することが期待されています。
終わりなき「組織文化のデザイン」
「組織文化のデザイン」は、一度達成すれば終わりというものではありません。組織は常に変化し続ける「生き物」であり、環境もまた絶えず変化しています。したがって、組織文化のデザインとは、終わりなき「組織化(Organizing)」のデザイン的営為そのものです。
HRチームは、このダイナミックなプロセスにおいて、組織の現状を正確に把握し、手持ちのリソースを最大限に活用し、小さな試行錯誤を繰り返しながら、多様なステークホルダーと協調し、予期せぬ出来事を成長の糧に変え、そして何よりも主体的に未来を創造していくパイロットとしての役割を果たすことが求められます。同時に、既存のルーティンや支配的な文化を組織学習の観点から問い直し、必要であれば批判的に解体していく勇気も必要です。
あなたの会社では、組織文化のデザインにどのように取り組んでいますか? そして、HRチームはその中でどのような役割を担っていますか? 本稿が、皆さんの組織文化に対する認識を深め、より良い組織文化をデザインするための一助となれば幸いです。