前提:在日外国人労働者のビザの違い
日本で働く外国籍労働者は、在留資格(いわゆる「ビザ」)によって就労できる範囲や条件が大きく異なります。大きく次の3つに分けられます。
第1に、「高度専門職系(技術・人文知識・国際業務など)」です。学歴や専門知識を前提に、企業で日本人と同等の条件で働けます。第2に、「特定技能(1号と2号があります)」で、外食・介護・建設など特定分野でのフルタイム就労が可能です。特定技能は、単純労働と高度専門職の中間に位置づけられ、一定の日本語力や技能試験の合格が必要です。特に2号になると、店舗運営やチーム管理に携わる場合もあり、現場での専門性や経験が求められます。そして第3に、「技能実習(今後は育成就労へ移行)」です。技能移転を目的としながらも、雇用契約に基づく労働が基本となっています。
ビザによってキャリアの方向性も異なる
高度専門職系は、大学や専門学校での学びや職務経験を背景に、企業で専門職や総合職として働く在留資格であり、日本人とほぼ同じ条件で昇進・転職・長期的なキャリア形成が可能です。本人のキャリア思考も、「専門性を深める」「マネジメント職へ進む」といった中長期的な展望が中心です。さらに、永住や定住へつながる道も比較的明確に設計されており、長く日本でキャリアを築きたい人にとって安定性があります。
特定技能は、外食・介護・建設などの分野においてフルタイム就労が可能で、現場の即戦力として期待されています。特定技能は単純労働と高度専門職の中間に位置づけられるため、キャリアの広がり方は多様です。特定技能1号の在留期間は原則5年間までですが、日本語力や技能の向上を通じて、将来的に特定技能2号や介護などの専門職系の資格へ移行する道もあります。特定技能2号になると在留期限がなくなり、家族帯同も認められるため、マネジメント職や副店長・リーダー職として長期的にキャリアを積むことが可能です。本人のキャリア思考は、「現場での経験を重ねて上位資格につなげる」「将来的に日本で定着する」など、挑戦的かつ実務的な視点が強くなります。
技能実習は、本来技能移転を目的として設計されましたが、実際には労働が基盤となっており、キャリア形成の自由度は低い制度でした。そのため、国際的な批判や制度上の課題を踏まえ、政府は技能実習を廃止し、新たに育成就労制度を導入する方針を示しています。育成就労では、人材の適正配置やキャリア形成への配慮が強化され、受け入れ企業が将来的な定着を見据えて支援する仕組みが導入される予定です。従来の「短期間で収入を得て帰国」という実習生のキャリア思考から、より発展的なキャリア形成を視野に入れる方向へと変化していくことが期待できます。
このように、外国籍人材のキャリアは在留資格によって異なります。近年の制度改革や社会の変化を踏まえると、全体としては中長期的な視点でキャリア形成を可能にする方向へ移行しつつあるといえます。それに伴い、外国籍人材自身のキャリア思考も「一時的な就労」から「定着と発展」を見据えたものへと変化していくでしょう。

