スキルベース人材マネジメントを支える生成AI活用基盤「Job-Voyage」
松岡 それでは、NTTドコモグループの人的資本経営における生成AI活用について、御社の人事AIレコメンド基盤Job-Voyageを中心にお聞かせください。
郡氏 生成AI活用の中心はスキル管理に加えて、人事AIレコメンド基盤Job-Voyageです。
Job-Voyageは、AIを活用して1人ひとりの人材に多様な機会をレコメンドするシステムです。スキル、コンピテンシー、経験、本人希望などのデータをインプットに、適材適所の配置候補、次のキャリア・ポスト、育成機会(研修の推薦や手挙げポストの提示)をAIがレコメンドします。10月には対話形式のエージェントを通じて、個人のキャリアゴールと現状スキルの棚卸しに基づく具体的アクション(リスキリング提案など)を提示する機能のリリースを予定しています。社内浸透を促すための「社長アバター」を用いるなど、技術だけでなく人の行動変容を促す設計をしています。
松岡 生成AI活用を進めるうえで、どういったことを大切にしておられるのですか。
郡氏 AIで何でも自動化するのではなく、「ケンタウロス」モデル(AI+人)を前提に、人間にしか判断できない領域を明確化することです。AIによる「素案作成」と「人による検証」の組み合わせが現実的だと感じています。
AIが進化することで、むしろ人間は何をするかを問い直す機会にもなります。人事の意思決定プロセスそのものがAI導入によって整理され、透明化されるという副次的効果がありました。たとえば、生成AIによる配置レコメンドを導入した結果、従来ブラックボックスだった意思決定軸が見える化され、重要ポストにおける“総合力”と“専門力”のバランスに関する議論が社内で活性化しました。

