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人的資本経営 Executive Deep Diveレポート | #1

NTTドコモが描く生成AI×人的資本経営 スキルベースマネジメントで最大化する社員の可能性

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スキルベース人材マネジメントの将来に向けた可能性と課題

松岡 NTTドコモが考える、スキルベース人材マネジメントの将来に向けた展望についてもお聞かせください。

郡氏 私たちの目指す未来像は、スキル可視化とAIレコメンドによって「個人の成長が事業成長に乗る持続的なサイクル」をつくることです。そのために不可欠なのは、ジョブディスクリプションの標準化、スキルの市場価値評価、そして報酬体系や認定制度との連動です。NTTドコモは当面、自社の特色を残しつつ必要なところから標準化を進め、段階的に外部との互換性も持たせることを目指していきます。これにより、社内外の人材をシームレスにプロジェクトやポジションへアサインできる柔軟な人材マネジメントの実現を図ります。

松岡 ありがとうございます。私も、内部労働市場と外部労働市場の接続こそ、静的ではなく動的な人材ポートフォリオを実運用するために必要なものだと考えます。郡さんの語ってくださった展望は、日本の大企業が実践していくことで、日本の労働市場を、企業にとっても働く人材にとっても魅力的なものにできると感じます。郡さんのリーダーシップと、NTTドコモならではの技術力で、ぜひ実現していただきたいという気持ちでいっぱいです。

 内部労働市場を外部に接続する際に大きな問題となる「企業特殊的スキル」と「一般的・汎用的スキル」の扱いについても、改めて教えてください。

郡氏 NTTドコモでは、当面は自社に合わせたスキル整理を重視しています。まず内部で使えるスキル基準を整備したうえで、将来的にはジョブディスクリプション自体を標準化し、競合比較可能な形式に整え、そこから生成AIで抽出されるスキルを市場価値と結び付けることで、「市場競争力を意識したもの」に変えていきます。これによって、ジョブディスクリプションを社内外を越えた人材の流動や報酬設計に対応できるようにしたいと考えています。

松岡 私も、日本企業のスキルに対する考え方について、以前から感じていた問題があります。まず、社内での使いやすさを優先し、何でも「企業特殊的スキル」であると偏った分類をしてしまうことです。また、とにかく「一般的・汎用的スキル」のほうが市場価値が高いとして、スキル定義の汎用性を求めすぎてしまうことも問題だと感じます。

郡氏 そうですね、自社独自スキルが競争力の源泉であれば、それを安易に“一般化”してしまうことはリスクではないかと思います。

 一方で、スキルが可視化され、社内で均質に扱われることで、希少性の高いポジションが市場価値に見合わない扱いを受ければ、人材流出を招く可能性があります。

 こうした考えから、今後、可視化の先には「スキル希少性評価」や「スキルの市場価値を反映した報酬体系の再設計」といった、さらなる対応が必要ではないかと考えています。重要なスキルに対しては「認定制度」などを設けることでスキルレベルの確からしさを担保し、報酬制度とも連動させることも必要ではないでしょうか。

松岡 スキルの市場価値は、企業独自か汎用的かで決まるものではなく、希少性や生み出す付加価値によって決まるべきものであり、こうした世界観も人事制度設計・運用に組み込む方法があるというお話でした。大変重要なコメントをいただき、ありがとうございました。

モデレーターから一言(編集後記)

 イベントの事前打ち合わせで、郡さんが人事の仕事に対する思いを語ってくださったことが印象的だったので、イベントの冒頭、郡さんをご紹介した後、私から「人事の仕事について、どんなことを大切に思ってらっしゃるかお話しいただけますか?」と質問したところ、「さすがDeep Dive。深く潜るというか、いきなり“思い”からスタートするっていうのはすごいですね」と笑いつつも「人事担当者の理想像はスポーツチームの監督のようなもので、人を見極めて育てて生かすことが重要」と力強く答えてくださいました。そこから最後まで、郡さんの社員への熱い思いがずっと伝わってきました。

 NTTドコモで取り組みを実際にリードしてこられた実績と、スキルデータ活用の未来形についても語ることのできる、遠くを見る目線を合わせ持つ郡さん。今後も社内外でいっそうご活躍される方だと確信しました。これからも応援しております! ご登壇をありがとうございました。

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この記事の著者

松岡 佐知(マツオカ サチ)

ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会 上席研究員
野村総合研究所 コンサルティング事業本部 人的資本経営ドメイン シニアプリンシパル

京都大学法学部卒業、London School of Economics and Political Science修士課程修了(MSC in Internationa...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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