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インタビュー《人材育成》| DXに向けた取り組み

全社員がDXを自分事化する! ファミリーマートのデジタルリテラシー向上と実践重視の研修

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デジタル活用も現場の問題発見から

ここからは、前述の講演内容を踏まえ、大石卓也氏と佐藤義則氏に行ったインタビューをお届けする。

——今回の取り組みでは、DX人材育成のフレームワークが整えられています。これはいつから、どのような背景で実施が始まったのでしょうか。

大石卓也氏(以下、大石) もともとは2023年度に始めました。2022年の終わりぐらいに、弊社社長の細見(研介氏)から指示があったのがきっかけです。コンビニエンスストア業界は「システム産業」と呼ばれているのに、システムに精通した人材がシステム本部にしかいないではないか、という問題意識がまずありました。大多数の社員はシステムを理解できていない。そんな状態で本当に良いのか、という点ですね。

 また、商品の購買データだけでなく、社内にあるさまざまなデータが本当に活用されているのか、という課題もありました。できているとはいえない状況だったので、「できるようにしなさい」という指示があったのです。

 それで、2023年度にIT・DX人材育成を始めました。データ活用研修やシステム開発推進研修はこのときからスタートしています。併せて同年度には、全社員向けのデジタルリテラシー研修なども行いました。しかし、身に付けたものを業務で活かせないことには、研修の効果がありません。つまり、デジタルリテラシーは身に付けるとしても、DXの「X」(変革)ができる人材を併せて育てていかないといけない、ということです。

 そこで、2024年度から大きくバージョンアップをして、今の育成体系に近い状態にしました。本格的に現在の形でスタートしたのは、昨年度からという形になります。

株式会社ファミリーマート 管理本部 人財開発部 部長 大石卓也氏
株式会社ファミリーマート 管理本部 人財開発部 部長 大石卓也氏

——バージョンアップで、ビジネス変革を研修の起点にされたわけですね。ただデジタル系の研修は、受講者に「何のために勉強するのか」で腹落ちしてもらうのが、とりわけ難しいと思います。会社として目標を掲げるなどしましたか。

大石 AIを含めたDX人材育成の目標というのは、特に掲げていません。ただ、たとえばAIについては細見からも、まずスーパーバイザー職(店舗経営のコンサルタント)は全員使えるようにして、そこから成功事例を出して共有していく、ということを昨年度から行っています。ここはトップダウンで進めている部分です。

——トップダウンで推進されているのですね。

大石 はい、AIについては進んでいます。一方で、DX人材育成はトップダウンで進んでいるわけではありません。

 その代わり、先ほどの講演で申し上げたように、「実務につなげる」というところで工夫をしています。上級研修では実際に業務改善を考えていくわけですが、「こういう改善をしてください」とこちらから指示するわけではありません。まず今の現場での「問題発見」を行い、そこに対する「課題設定」をして、その解決策をデジタル技術を使って実施する。それ自体を研修に盛り込むことで、研修と実務がつながっている状態をつくり出しています。

佐藤義則氏(以下、佐藤) 実は、初年度は全然違う形でデータ活用研修を行いました。期待値としては「統計を使ってデータ分析をする」というものだったのですが、結果として「データ分析なんて任されていない」という人も出てきてしまいました。そのため次年度から、デジタル技術や統計手法などを使って、自分の課題解決をする、そしてそれを実装までやるという研修にしました。

 参加者は推薦や手挙げで募っています。研修の最初で学ぶのは、問題発見と課題設定の方法です。そのうえで上長と話し合いをして、参加者には研修中に何をやるのか、つまり解決するべき課題を決めてきてもらいます。たとえば、私の部下は「研修の受講者データを使えていない」という課題を解決するために、データ活用研修に出ています。彼はデータベースをつくる思考・技術を持っていないので、研修で学ぶのです。

 ただ、その解決策として使う技術はAI、Python、Access、SQLなどバラバラです。そこで、社内にいる「教えられる人」を巻き込んでいって、その人を実装支援コーチとしてつけています。そのために、社内にネットワークを張り巡らせています。

株式会社ファミリーマート 管理本部 人財開発部 社員教育・DX人財育成支援グループ マネジャー 佐藤義則氏
株式会社ファミリーマート 管理本部 人財開発部 社員教育・DX人財育成支援グループ マネジャー 佐藤義則氏

大石 問題発見や課題解決の知識やスキルはデジタル活用に直接関係なさそうですが、ビジネスパーソンとして持っていなければならないものです。そうした知識やスキルもいっしょに身に付けないと、DXはなかなか機能しないだろうというのは、この施策を進めていて強く感じるところです。

——問題発見・課題解決の力を身に付けてもらったうえで、解決の武器としてデジタルを与えましょう、というイメージですね。ところで、上級研修は推薦や手挙げで募っているとおっしゃっていました。その前に、全社員にDXリテラシー研修を実施していることには、手挙げで参加してもらうための土壌づくり、つまりデジタルというものを知ってもらったうえで、デジタルでこうすれば課題を解決できそうというイメージを持ってもらうねらいがあるのでしょうか。

大石 おっしゃるとおりです。理想は、初級研修を受けた全社員が、上級研修も「受けたい」と手を挙げることです。昨年度は想定を上回る手挙げがありました。今年度も上半期は想定を上回って全体の3分の1が手を挙げてくれたので、下半期も3分の2を超えることを期待していましたが、実際には手は挙がりませんでした。そのため、足りない分は指名で参加を促しています。

——現場の社員の方の中には、「自分の業務はDXとは関係ない」と思っている方もまだ少なくないのかもしれませんね。

佐藤 上級研修のエントリーシートに、「私の業務はDXとは関係ないと思っていましたが、リテラシー教育を受けて関係あるように思えてきたので手を挙げました」というコメントもありました。

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この記事の著者

市古 明典(HRzine編集長)(イチゴ アキノリ)

1972年愛知県生まれ。宝飾品会社の社員、辞書専門編集プロダクションの編集者を経て、2000年に株式会社翔泳社に入社。月刊DBマガジン(休刊)、IT系技術書・資格学習書の編集を担当後、2014年4月より開発者向けWebメディア「CodeZine」の編集に参加。その後、2017年7月にエンジニアの人事をテーマとする「...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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