パーソル総合研究所は、「離職の変化と退職代行に関する定量調査」の結果を発表した。
同調査は、近年の就業者の離職行動の変化や退職代行利用の実態とその要因を明らかにすることで、リテンションマネジメント(離職を防ぎ、定着を促す人事戦略)に資する知見を提供することを目的に実施したという。
同研究所は、結果について以下のように述べている。
離職者のうち、退職代行を利用した人は5.1%(約20人に1人)
離職者のうち「退職代行」利用者は5.1%、離職者全体の約20人に1人が利用している。利用した退職代行サービスの運営主体では、民間企業が約4割と最大割合を占めるが、労働組合も約3割となっている。
退職代行利用者は一般離職者よりも年齢層が若く、20~30代で約5割となっている。退職代行利用者の前職在籍期間は、「1年未満」が約4割で、一般離職者の約2倍となっている。
上司への不満7割、ハラスメント経験4割——関係悪化が退職代行利用の背景に
一般離職者の不満を比較すると、前職への不満で最もギャップが大きいのは「直属上司との関係」である。また、「直属上司からのハラスメントを受けた」と回答した人も約4割に上る。職場における人間関係の悪化やハラスメントが、退職代行利用の大きな要因となっている。
退職代行利用者は一般離職者より“協調性”が高く、責任感が高い特徴も
退職代行利用者は一般離職者と比べて、「周りの人たちと密に力を合わせて働きたい」志向が強い。

また、退職代行利用者は一般離職者よりも前職の関係者に対して「申し訳なさ」を感じており、自分を「裏切りもの」であるとも感じている。一般に指摘されがちな「身勝手さ」や「無責任さ」は、退職代行利用者の特質としては全くあてはまらない。
以上のほか、同調査の結果として下記が挙げられている。詳しくはプレスリリースを参照のこと。
- 協調的だが孤立する現実——相談相手がいない人が多数
- 退職代行利用後のトラブルは「金銭トラブル」が最多——一方で「トラブルなし」も5割
- 離職者の不満は「長時間労働」から「成果圧力」へ——働き方改革後の新たな離職構造
- 若年層の“成長離れ”が離職リスクを高める——上司支援低下と連動した変化も
なお、同調査の結果について、パーソル総合研究所 主任研究員の小林祐児氏は、次のようなコメントを出している。
「コロナ禍を経て、働く人の『辞め方』の様相が大きく変化している。かつて主要な離職要因であった『長時間労働』や『低賃金』といった不満は、働き方改革や賃上げの進展により相対的に低下した。だがその一方で、若手の成長意欲は弱まり、組織から求められる成果に対して圧力を感じやすくなったことが、新たな離職リスクとして顕在化している。
現場のマネジャーも多忙やハラスメントへの恐れからか、部下への成長支援や権限移譲といった本来求められる育成支援を十分に行えなくなってきている。結果として、組織が求める成果に、若年層がついていけなくなっている状況だ。
一方、近年広がった退職代行利用の要因を分析すると、上司のハラスメントの問題以前に、職場の人間関係全体が希薄化し、上司一人に職場のコミュニケーションが依存している問題が示唆された。
こうした中で企業に求められるのは、従業員は『網の目の中で育てる』という視点だ。それは、❶縮小している上司の育成支援を復活させることに加え、❷上司だけでなく、職場の対人ネットワークの中で育成支援を拡充させることである。短視眼化しがちな現場マネジメントを『成長』志向へ転換すると同時に、『上司任せ』ではなく、相談と教育を支援する人的ネットワークの輪を構築することである。人の網の目を細かくし、その中で挑戦できる環境こそが、これからの従業員の定着と成長を同時に実現できるだろう」(小林氏)
調査概要
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