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HRモダナイゼーション ~グローバルのベストプラクティスに学ぶ日本人事への提言~ | 第9回

グローバル標準のタレントアクイジション(TA)組織とは? 従来型採用チームとの違い・実践ポイント

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日本企業のキャリア採用に潜むリスク

 日本企業でもキャリア採用は当たり前になってきました。多くの企業ではキャリア採用専任のチームや担当を設置しています。自社の採用サイトについても、キャリア採用のための情報や募集案件を載せることが多くなりました。また、キャリア採用といっても第二新卒や役割不特定のポテンシャル採用ではなく、具体的な職務内容を前提とした即戦力採用を求める割合が増えています。

 日本企業でのキャリア採用の大きな流れをまとめると、次のような進め方が多いのではないでしょうか。

<キャリア採用の大きな流れ>
  1. 事業部門が、欠員の穴埋めや、事業成長のための人員の不足感などを理由に採用のリクエストをする
  2. 採用チームがリクエスト元の事業部門から募集人材の要件を確認し、募集要件(Job Requisition、ジョブレクなどとも呼ぶ)を作成する
  3. 募集要件を自社のキャリア採用サイトに載せ、また、付き合いのある採用エージェントに相談・依頼する
  4. 採用エージェントから候補者の紹介を受け、候補となりうる場合に選考に進んでもらうべくコミュニケーションを継続する
  5. 複数回の面接など、自社のルール・プロセスに則って選考を進める
  6. 採用内定を出したい候補者とオファー面談をし、報酬、入社日、その他諸条件を確定する
  7. オファーレターに署名をもらい、採用(入社すること)が確定する

 採用確定後、入社日までの間に入社予定者への情報提供や手続き案内などの事前コミュニケーションをすることもありますし、入社後のフォローアップや採用エージェントフィーの支払いなどもありますが、「人材獲得」という点で大きく17としてまとめました。自社のプロセスと多少異なる部分があるかもしれませんが、大きくは違和感がないのではないかと思います。

 しかし、これらの採用プロセスには次のようなリスクが潜んでいます。

リスク①:人員だぶつきの増長

 多くの企業では、要員計画と整合したオープンポジション管理が徹底できておらず、採用可否判断の妥当性が不透明になっています。「欠員を穴埋めしたい」「事業成長や組織目標達成のために人が足りない」と言われると増員したほうが良さそうに思えますが、要員計画上増員予定はない、欠員補充をしないということになっている場合は、現有人材をやりくりして組織目標を達成しなければいけません。計画にないがどうしても必要という場合でも、事業予算を考慮しながら計画外の増員の必要性を適切に判断・承認するプロセスが必要となります。

 また、「管理が徹底できていない」と指摘すると、「そんなはずはないでしょう。人件費予算の大枠を見て増員の妥当性判断をしています」と返答がある場合がありますが、具体的な計画や現状把握ができていなければ、どんぶり勘定で判断しているようなものです。さらに、どんぶり勘定で人員予実管理がうまく回っているということは予算策定自体が甘くなっている可能性があり、将来の人員だぶつきリスクを増長させてしまいます

リスク②:社内人材活用の機会損失

 多くの日本企業では「採用」と「異動」はまったく別の業務と考えられています。採用チームは社外の人材を獲得する役割であり、社内人材の異動は役割の範囲外とされています。しかし、人材を必要としている組織にとっては、適任がいれば社外・社内関係なく人材が欲しいはずです。

 社内異動の場合は異動元の状況や候補者本人の意思も関係するので、社外からの採用とやり方・考え方が異なる部分はありますが、社内外の人材獲得プロセスや関連するチームが分かれているということで、社内人材を活用する機会を失うだけでなく、社内人材をもてあましてしまうリスクがあります

リスク③:採用リードタイムの長期化・候補者品質の低下

 採用チームは受け身の姿勢でいることも多いです。事業部門からの採用リクエストを採用活動のトリガーとしている場合、その時点から候補者探しの活動が始まるため、おのずと採用リードタイムがかかります。さらに、他社・他業界でも必要としている競争率の高い人材や、特殊な人材要件で適任者がそもそも市場にいないという場合は、採用が長期化します。

 しかし、いつまでも待ち続けるわけにもいかないので、人材要件の期待値を下げてでも何とか採用しようとすることも多く、採用品質の低下につながります。結局、受け身な採用活動は、採用リードタイムの長期化と候補者品質の低下につながります

リスク④:採用担当の低レベル化

 多くの企業では、社外からの人材獲得に採用エージェントを活用しています。採用エージェントにはそれなりのコストはかかりますが、積極的に候補者を探してきてくれるので便利です。しかし、過度な活用は、採用担当がエージェント丸投げの便利さに慣れてしまい、自ら採用案件に積極介入することがなくなるリスクがあります。募集元部門と採用エージェントの仲介だけをする役割になってしまいます。

 また、多くの企業は自社採用サイトを持ち、キャリア採用案件を掲載していますが、一部の採用人気企業を除いてほとんど使われていない状態です。本来自社の採用ブランディング向上やダイレクトリクルーティング活動のために自社サイトをもっと活用すべきなのですが、このような状態であれば採用担当も採用サイトも不要かもしれません

リスク⑤:採用ガバナンスの崩壊

 高度スキルを保有する人材やマネジメントクラスの人材になると、自社の予算より高い希望報酬を提示されることや、他社からも良いオファーが出ているらしく募集時の条件では自社に決めてもらえないかもしれないということが出てきます。

 どうしても獲得したい人材であれば、条件を引き上げることも必要ですが、募集元や採用担当だけで勝手な判断をしてしまうと常に予算オーバーでの採用になりがちです。良い人材に出会う場合の多くは、条件が合わず難しい判断となります。それを毎回現場レベルで判断してしまうと、人員数は守っていても人件費の積み上げが大きく予算オーバーしてしまったり、「とにかく相手の言い値で採用してしまおう」という良くない癖がついたりするリスクがあります。

 また、ハイスペックな人材に出会ったときに、現在募集中の適切なポジションはないけれども、「なんかすごそうな人だから採用してしまおう」と予定外の採用をしてしまう例もあります。このような場合、絶対採用してはいけないというわけではありませんが、オープンポジションがないということは、本来的には会社として必要のない増員ということになりますので、慎重に判断することをおすすめします。

 キャリア採用の課題となると、「良い人が見つからない・採れない」という話になりがちですが、採用プロセス全体として上記のような潜在課題があることも認識いただきたいです。

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この記事の著者

籔本 レオ(ヤブモト レオ)

ワークデイ株式会社 チーフHRストラテジスト。
外資系コンサルティングファームにて、HRトランスフォーメーションを中心とした人事領域のコンサルティングに従事。その後、 事業会社(日本企業)に移り、人事部門の立場から戦略的なHRオペレーティングモデルへの変革をリード。Workdayに入社する前は、外資系ソフトウェア企業にて...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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