登壇者

長澤 拓馬(ながさわ たくま)氏
フリー株式会社 HR事業戦略グループ HRコア本部 マネージャー
大学卒業後、総合人材サービス企業にて海外拠点で新規事業を展開。その後、DX支援企業に移り営業部マネージャーとして6拠点を管掌。2021年よりフリー株式会社にて人事労務プロダクトを中心にセールス、PMMを歴任。今に至る。
人事・労務担当者は、なぜいつも忙しい?
1.42人。これは中小企業における人事・労務担当者の平均人数である。しかも、86.5%が兼務だという。
このような少ない人数で多岐にわたる業務を遂行しなければならないだけでなく、さまざまな法改正にも対応していかなければならない。そして常につきまとうのが、入力ミスや漏れへのプレッシャーである。
給与計算・勤怠管理、入退社・社保手続き、日々の従業員対応、紙・Excelでの集計作業といった「定型・管理業務」に圧迫され、本来、注力すべき採用計画・母集団形成、評価制度の運用・改善、人材育成・研修、組織エンゲージメントのような「戦略・企画業務」に時間を割けない。このような課題をシステムによって解消し、人事・労務担当者が本来担うべき「人に向き合う」という役割を果たせるよう支援しているのが、フリーだ。
2012年に設立した同社は、統合型クラウド会計ソフト「freee会計」と統合型クラウド人事労務ソフト「freee人事労務」を主軸に、会社経営に必要なさまざまな領域でプロダクト・サービスを提供。バックオフィス業務のDXを支援し続け、導入事業所は2025年12月末時点で64万を超える。
freee人事労務で人と向き合うための時間を取り戻す
freee人事労務の大きな特長が「完全統合型」と「AIによる業務サポート」の2つである。1つずつ見ていこう。
まず、完全統合型とは、当たり前のようにデータがつながっていることを意味する。次図の左側にある「単体型」では、業務ごとにシステムが分かれており、それぞれのシステムで従業員情報と業務データを別々に保持している。それに対し、右側の「完全統合型」では、従業員情報も業務データも1つのシステムに集約されていることから、業務間をスムーズに行き来することができ、データの移行や重複作業は発生しない設計となっている。
一例として、一般的な給与計算業務を、「単体型」と「完全統合型」で比較してみる。
単体型の場合、まずは勤怠システムにログインし、勤怠実績や勤怠不備などの勤怠データをエクスポートする。それをもとに勤怠締め処理を行ったら、給与計算システムに取り込むために必要な加工処理を行う。そして給与計算システムにログインし、基本給の変更や各種手当の反映、社会保険料の随時改定対応などを行いながら、給与計算を行う。このように、システム間を行ったり来たりすることで、業務の非効率を生み出している。
他方、完全統合型の場合はどうか。freeeであればリアルタイムで従業員情報と勤怠情報が連動しているため、人事・労務担当者が何もしなくても給与計算が行われる。従業員が勤怠を締め、それを管理者が確定した段階で、システム内で自動的に給与計算が実行されるのだ。
完全統合型には、他にも簡単にドリルダウンできるというメリットがある。「何かデータがおかしい気がする……」と思ったときに、クリックでデータをさかのぼりながら、違和感の根拠を容易に特定できるというわけだ。たとえば、ある従業員の残業代が異常に多いと感じたら、そこから直接、勤怠データに遷移して、残業時間の実績を確認できる。
次に、もう1つの特長である「AIによる業務サポート」とは何なのか。長澤氏はfreee人事労務の具体的なAI活用機能として「AI年末調整アシスト」と「AIシフト管理」の2つを例として挙げた。
AI年末調整アシストは、従業員が手入力ゼロで年末調整手続きを進められる機能である。従業員が生命保険料控除証明書や住宅ローン控除証明書などの必要書類をスマートフォンで撮影・アップロードすると、AI OCRが読み取り、契約者・保険種類・区分・金額を自動入力する。その内容に不備や疑義がある場合はアラートで注意を促すため、ミスを未然に防ぐことができ、人事・労務担当者の確認作業も容易になる。
AIシフト管理は、シフト作成をAIが支援してくれる機能だ。通常、シフト作成では、希望日の回収経路が口頭やメール、LINEなどバラバラで、それをExcelにも転記しなければならないという課題がある。また、シフトを作成する際には、従業員同士の相性や、スキルに応じた配置人数など、さまざまな条件を考慮しなければならず、結果的にシフト作成業務は属人化しがちになるという課題もある。
しかし、freeeのAIシフト管理機能を使えば、こうした課題を解消できる。まずは、飲食店であれば、ホールやレジ、洗い場といったスキル、医療福祉業界であれば、看護師や准看護師、相談員や介護職員といったスキルを、カスタムして登録しておく。加えて、シフト別に必要なスキルと人数をシフト計画パターンとして登録しておく。たとえば、月曜日は「朝シフト:仕込み1名・洗い場1名」「昼シフト:ホール3名・洗い場1名・キッチン3名」といった具合だ。
このような初期設定さえしておけば、毎月回収する従業員の希望を踏まえ、ボタン1つでAIが約5分でシフトを作成してくれる。最初の設定で固定するのではなく、作成後に修正した内容も学習しながら、どんどん精度が上がっていくところが、AIならではである。
これからの人事・労務業務は、守りも攻めもAIで
このように、freee人事労務は「時間を取り戻し、人に向き合う」ためにある。つまり、人事労務領域を越え、従業員の能力を最大化する“ピープルコア”の領域でも役立つAI機能を提供している。その1つが「サーベイ(AI離職検知)」だ。
帝国データバンク調べによると、人材不足を感じている企業の割合は2024年12月時点で52.6%にのぼる。もともと離職率は大企業特有の課題だと捉えられてきたが、人材流動性が高まった近年では、中小企業でも切実な課題になっているという。
さらに、人材不足による倒産社数は、2024年に約350社に達したというデータもあるほどであり、離職率の高さに起因する人材不足は企業経営の根幹を揺るがす重大なリスクだといえる。
だが基本的に、退職意向は退職決意後にしか分からない。クライス&カンパニーの調査によると、仕事の悩みを上司や同僚に相談している人の割合は約40%に過ぎない。また、退職意向を伝えたタイミングは「退職を決意したとき」が約35%で最も多い。慰留されたときに気持ちが揺らいだ人は22%、転職をとどまった人はわずか1%しかいないという結果が出ている。
ではどうすればよいのか。「従業員のコンディションは常に変化するため、離職の前兆を察知するには、小さな“リズムのズレ”をAIで検知して見逃さないことが重要だ」と長澤氏は指摘する。
freee人事労務のサーベイを使えば、前回と今回のスコア差や、全社平均とのスコア差などからAIが複合的に判断し、従業員の離職リスクを4段階で評価してくれる。さらに、リスクの高い人に対してフォロー面談を行う際には、AIが分析結果をもとに面談アジェンダや人事面談チェックシートを自動生成する。これらをもとに個別最適化したフォローを行うことで、面談の質が向上し、離職防止につなげられるだろう。
最後に長澤氏は、「我々フリーが目指すのは、単なる業務効率化ではなく、労務DXとAI活用を通じて、人に向き合うための時間を取り戻すことだ。ぜひfreee人事労務とともに、そのような世界観を実現してもらいたい」と語り、セッションを締めくくった。

