「一緒に働かないと分からないこと」が分かる
——では、そもそもリファレンスチェックとはどのような手法なのでしょうか。あらためてその定義を教えていただけますか。
リファレンスチェックは、第三者の視点を通じて候補者の行動特性や働き方を把握し、採用判断の精度と再現性を高める手法です。候補者の上司や元同僚など、一緒に働いたことがある人に質問に回答してもらい、候補者がどんな人物かを確認する仕組みです。
その人のあらゆる背景情報を調査することを「バックグラウンドチェック」と言いますが、その一部にリファレンスチェックが含まれるイメージです。
日本にはなじみのない文化ですが、アメリカでは上司が部下の次の転職先に「リファレンスレター」を送ることが一般的です。一方で、これまでの日本は終身雇用の文化が根強く、上司が部下の転職を応援する習慣はありませんでした。こうした背景の中で、日本ではこれまでリファレンスチェックという手法が普及してこなかったのでしょう。
——今後人材の流動性が高まる中で、リファレンスチェックも浸透していきそうですね。では、リファレンスチェックを行うとき、企業はどういった情報を得ることを期待すればよいでしょうか。
面接では見極めにくい能力やスキル、行動面にフォーカスするのがよいと思います。仕事を完遂する能力やレジリエンス、勤怠不良がないかといった行動面など、長年一緒に働いてこそ把握できる部分を確認するとよいでしょう。
その際、面接で抱いた印象と、リファレンスチェックで得られた情報にギャップがある場合も出てきます。その際は、その情報が“ポジションに合致するかどうか”という判断材料として意識してみるのが1つの手です。
たとえば、ある企業が思い切った改革の実行が求められる役員候補のポジションで、「推進力がある人」を探していた時の話です。候補者のリファレンスレポートを見てみたら、周囲の人たちからの評価は非常に悪かった。しかし、その内容は「やると決めたら周囲の反対があっても物事をどんどん進めていく」「組織の目的のためには手段を選ばずに突き進む」といったものでした。企業は、むしろ求めている人材だと判断して採用したところ、入社後非常に活躍したそうです。
リファレンスチェックのコメントを「良い」「悪い」といった表面的な印象で判断するのではなく、そのポジションで求められる人物要件やスキルセットに、この候補者が合っているのかという視点が重要になります。

リファレンスチェックの理想的な設計と効率的な運用法
——企業がリファレンスチェックをより上手く活用するためのポイントはありますか。
リファレンスチェックは単体で使うというより、採用プロセス全体の設計の中で機能させることが重要だと考えています。
採用条件には、募集しているポジションの職務内容を遂行するために必要なスキル・能力のほか、組織の文化や価値観といった要件が絡んできます。そのため、「この職務内容にはこのスキルが必要」「この組織風土にはこの価値観が必要」といった要件を可視化することが必要です。さらに、必要なスキルや価値観を見極めるために面接でどんな質問をして、どんな回答が得られたらよいかまで言語化する必要があるでしょう。
構造化を進める中で、面接では測れないスキルや価値観が明確になります。それらをリファレンスチェックで確認するのが、理想的な活用法です。
実施のタイミングとしては、最終面接のあたりが現実的でしょう。まだ入社が不確実な1次面接などの早い段階で依頼すると、企業と候補者双方にとって負担となります。そのため、確度の高まった段階で実施するのが望ましいと考えます。
——リファレンスチェックを行うことで、選考期間が延びることはないのでしょうか。
選考期間が延びることは、ほとんどありません。最終面接に進むことが決まった時点で、面接の日程調整と同時に依頼すれば、最終面接当日までにレポートが完成していることが多いです。
また、私たちが提供するリファレンスチェックサービス「back check」には、レポート共有機能があります。複数企業からリファレンスチェックの依頼を受けた場合、過去に実施したリファレンスを新たな企業に共有できる仕組みです。
このように、リファレンスを書く方への負担を軽減するサービスを活用することで、選考スピードを落とさずにリファレンスチェックを導入できると思います。


