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2026年2月5日(木)@オンライン

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特別寄稿《人材活用》| 最新の人材ポートフォリオ構築

「スキルデータ」の陳腐化はAI推論で解決 それによって可能になる人材ポートフォリオ構築とは

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人材ポートフォリオへの昇華:「ジョブ×FTE」による意思決定

 スキル推論によって得られるのは、社内にどのような能力がどれだけ存在するかという最新の「供給データ」です。これを経営の意思決定に接続するためには、単なるスキルの一覧ではなく、「人材ポートフォリオ」という考え方への昇華が不可欠です。

 人材ポートフォリオを構築する目的は、経営戦略の実現に必要な「人材の需要」と、現在の「供給」のギャップを構造的に把握することにあります。多くの企業では、経営が描く戦略に対して、どのようなスキルを持つ人が何人必要なのかが曖昧なまま、従来の人事慣行に基づいた配置が行われています。これを「ジョブ(仕事)」と「FTE(Full-Time Equivalent:人数・工数)」の軸で整理することで、戦略実現に向けたリソースの過不足を定量的に可視化し、具体的な「投資」としての判断を可能にします。

 これを実装する場合には、次の手順のような手順を踏みます。なお画面は、弊社が人材ポートフォリオ構築向けに開発したシステムのものです。

1スキルを「ジョブ要件」に翻訳する

 スキルを個別に追うと議論が複雑化します。そのため、ジョブ単位で「必須スキル」を3〜5個程度に絞り込みます。これにより、経営陣にとって直観的で判断しやすい形式になります。

 先述の大手ITサービス業のお客様では、図3のように各ジョブで現在求められるスキルか、それともAIの浸透によって2030年にも継続ないしは新規で求められるスキルか、要件を明確化しています。このジョブに求められる必須スキルの初期提案は生成AIが行います。職務記述書や事業戦略、外部環境変化を人が入力し、公開情報も組み合わせてAIがドラフトを生成します。人はそれに対して要件とするか否かのチェックと追加したいスキルを入力し、ジョブ要件の品質を高めることのみに集中できます。この“人が最終決定する”設計が、推論型モデルを現場実装に耐えるものにします。

図3:生成AIを活用したジョブ要件(必須スキル)の設計イメージ。職務記述書や事業戦略、外部環境データをもとにAIがジョブ要件案を生成し、人が最終判断・補正を行うことで、将来を見据えたスキル要件定義を効率化
図3:生成AIを活用したジョブ要件(必須スキル)の設計イメージ。職務記述書や事業戦略、外部環境データをもとにAIがジョブ要件案を生成し、人が最終判断・補正を行うことで、将来を見据えたスキル要件定義を効率化
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2ジョブ要件を満たす人の数とギャップを把握する

 ジョブごとに求められるスキル要件を定義したら、その要件を満たす人が何FTE存在するかを数えます。このとき、「必要人数(需要)」と「要件充足人数(供給)」を混ぜて議論してしまうことが少なくありません。混ぜて議論すると失敗します。将来の「必要FTE(需要)」は事業の成長率や生産性から算出し、現在の「適格FTE(供給)」はAIによるスキル推論から導き出します。この両者のギャップを明確にすることで、施策の優先順位が定まります。

 先述の企業では、ジョブごとに必要FTE(需要)を算出する計算式を生成AIが複数提案し、人が式を選択し、インプットとなるデータを入力しています。それにより図4のように組織×ジョブごとの必要FTEを算出します。

図4:ジョブ別「必要FTE(需要)」算出の可視化例。事業成長率や生産性前提をもとに、生成AIが複数の算出ロジックを提示。人が選択・検証することで、将来の人材需要を透明性高く定量化
図4:ジョブ別「必要FTE(需要)」算出の可視化例。事業成長率や生産性前提をもとに、生成AIが複数の算出ロジックを提示。人が選択・検証することで、将来の人材需要を透明性高く定量化
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 そして、最終的にそのジョブに将来求められるであろうスキル要件を満たしている適格FTE(供給)の人数と、図4の必要FTE(需要)を重ね合わせて、どの組織×ジョブで人材の不足が発生し、特にその中でもどんなスキルが不足するのかを見えるようにしたのが図5です。

図5:人材ポートフォリオによる需要と供給のギャップ可視化。将来のジョブ要件を満たす人材供給と、戦略上必要な人材需要を重ね合わせることで、組織・ジョブ・スキル単位での不足領域を明確化
図5:人材ポートフォリオによる需要と供給のギャップ可視化。将来のジョブ要件を満たす人材供給と、戦略上必要な人材需要を重ね合わせることで、組織・ジョブ・スキル単位での不足領域を明確化
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 人材のポートフォリオの需給ギャップに対して、その充足のためのアクションについてもシミュレーションできます(図6)。ジョブごとに求められるスキルの類似度合いから、どこからどこにリソースシフトするのが最も合理的か、それでも賄えない分はどれだけ採用しなければならないか、複数のシナリオを立て、選択・調整することが可能です。

図6① 図6②
図6:人材のGAPをどのように埋めるべきか、ジョブごとに求められるスキルの類似性から最適なリソースシフトをシミュレーションできる
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先進事例に見る「推論型」モデルの実力

 ここで事例を紹介しましょう。グローバル市場では、AIによるスキル推論を経営の根幹に据える企業がすでに大きな成果を上げています[1]

事例A:グローバル消費財メーカーにおける「労働力の再配分」

 ある世界展開する消費財メーカーでは、AIを活用したタレントマーケットプレイスを導入しました。全社員のスキルと社内で発生するプロジェクトをリアルタイムでマッチングさせる仕組みを構築した結果、組織全体の生産性が41%向上しました。さらに、既存の職務の枠を超えた活動により、累計50万時間以上もの労働力をビジネス上の優先課題へと再分配することに成功しています。

事例B:グローバル通信機器巨人の変革

 10万人以上の社員を抱える大手通信機器メーカーでは、既存の人事システムや学習プラットフォームのデータをAIが解析し、1人ひとりに最適な「スキルプロファイル」を自動生成して提供しています。これにより、技術転換期において習得すべき重要スキルが明確になり、スキルの習得率が75%以上に達するなど、社員のキャリア開発が劇的に加速しました。

事例C:グローバル物流企業における「内部登用の最大化」

 ある物流大手では、AIを用いて社員のスキルと空きポジションを動的にマッチングさせました。従来は外部採用に頼っていた高度な専門職において、社内の潜在層をAIが特定することで、内部候補者での空きポジションの充足率が22%向上し、空きポジションの充足リードタイムを20%短縮させることに成功しました。

[1]: この事例で示す数値は、各社・各ベンダーが公表している導入事例に基づくものであり、指標定義は事例ごとに異なり得る点に留意ください。

事例出典

  • “How Unilever used upskilling to prepare for the future”
  • “Case Study: Unilever achieves 41% productivity improvement and rapid upskilling with Gloat's talent marketplace”
  • “How Ericsson made skills visible and actionable for 100,000 employees with TechWolf”
  • “NTT DATA's skills-based path to strategic staffing and talent acquisition”
  • “Case Study: NTT DATA doubles employee self-nominations and referral rates to fill roles with the most skilled candidates with Eightfold”

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人材最適配置の進化:「静的な適材適所」から「動的な最適解の探索」へ

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この記事の著者

佐藤 一樹(サトウ カズキ)

アビームコンサルティング株式会社 人的資本経営戦略ユニット ダイレクター。

外資系コンサルティング企業にて、タレントマネジメント、AIを活用したHRテクノロジー、従業員エンゲージメントに関わる新事業の立ち上げをリード。現職では、日本企業に対する人的資本経営実現に向けたエンプロイヤーブランディングコンサル...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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