海外IT人材の採用に際した2つのポイント
ポイント1:採用候補者プールの形成
海外IT人材の採用に際しては、採用候補者を常に一定数確保し海外IT人材の情報をメンテナンスしておくことが肝要である。下記図4を参照していただきたいが、彼らはボーダレスで流動性が高いため、企業側としてはよりきめ細やかに仕事の状況やプロジェクトの切れ目を把握し、要員計画や繁閑に応じて候補者にアプローチをかけていくことが必要となる(採用しようと思った時には違う会社・国に行ってしまっていたということが起こりかねないため)。一方で、候補者側は企業の事業内容や状況を納得いくまで吟味し、信頼関係の構築に時間をかけることが可能となる。
上記の内でも信頼関係の構築は海外IT人材の採用上特に重要である。どのような人材でも世界の主要都市や母国に支店がなく、またそこで勤める人々の「人となり」が分からなければ海を越え移住してまで極東の会社を選ぶことは考えにくい。候補者プールを形成し、また、そのような課題にアプローチするためには「海外採用支店の設立」や「ヘッドハンティング部門の設置」も検討すべきオプションとなり得るであろう。どんなに小さなオフィスでも、現法として「その場に」存在することは大きな信頼感の獲得になるし、採用候補者にリーチしやすくなるのだ。実際に日系最大手のメーカーでは既存の海外拠点にヘッドハンティングの専任部隊を配置し、採用候補者とのパイプを太くしているし、日本の先端テクノロジーベンチャー企業でも生き残りをかけて海外IT人材発掘のための専任部隊を設置している。
ポイント2:採用チャネルの多角化
リファーラル(従業員の知り合い紹介を通じたIT人材の発掘)の推進も、採用の際の重要なポイントとなる。理由としては非常に単純で、従業員が同僚になるかもしれない人材を紹介する際にはその質を十分吟味するし、優秀な人材の周りには優秀者が集まる(またはそのようなコミュニティーに属している可能性が高い)と想定しているのである。リファーラルで入社する人材に関しては前述の信頼関係構築を行う必要がなくなり(最低限の対応で十分となり)、さらに海外採用支店や採用専任部門が設置されていればリファーラル人脈のメンテナンスやプール形成等についても合わせて推進可能であるため、日本企業が海外IT人材の採用をする際の一助として期待できる。
実際、米国最大手のIT企業においては一時期の採用のほとんどをリファーラルで賄っており、現在も採用の第一手法としてリファーラルを採用しているほど信頼性の高い採用手法であると言える。
また、チームハイヤリングやM&Aなどで組織ごと人材を獲得することも、海外IT人材を獲得する上でのオプションとなり得る。多くは大規模プロジェクトを受け持つSIerが実施するのだが、この場合リファーラルよりもより明確に成果を見てから採用に踏み切ることができ、一定数を一度に確保することが可能となるのだ。
ただし、このような大規模採用を実施した際には必ずと言ってよいほど既存組織との摩擦が起き、リテンションのケアが必要となる。次章ではこのようなリテンションのポイントについて紹介していく。