日本が海外エンジニアを採用できる最後の時代⁈
——近年、ITエンジニアの不足が喫緊の課題です。あらためて社会的背景を教えてください。
大西健資氏(以下、大西) まず、日本の人口は減少に向かっています。かつ高齢化が進んでおり、日本の労働人口が増える見込みはありません。また、経済産業省のDXレポートで「2025年の壁」が提起されたように、日本のDXは遅れている状況です。世界から出遅れている要因の1つとして、特にソフトウェアエンジニアの不足が顕著であるといわれています。
こういった状況を改善しようと、政府はリスキリングを推進しようとしています。しかし、おそらくリスキリングでは、企業が望む人材はなかなか生まれないでしょう。コードを書ける人は増えるでしょうが、ビジネスで必要なのは、企業がやりたいことを技術を使ってどう実現できるだろうかと絵を描ける人。そして、どのような設計書を書けば実現できるのかを考えられる、いわゆる上流部分を担う人です。この上流を担える人材が日本に圧倒的に足りていません。
——そうした事情を受けて、海外のIT人材に注目が集まっています。
僕たちが良く知るベトナムを中心に、海外のIT人材は、上流の工程も任せられるくらい技術力は高く、層も厚い。
そういった海外のIT人材を日本が獲得するチャンスは、今がラストに近いと考えています。今であればまだ、海外のIT人材は、日本に対してポジティブなイメージを持っています。他の国と比べて働きたい環境だと思ってもらえるギリギリの水準です。しかし今後、1人当たりのGDPなど、日本の競争力がさまざまな国に逆転されていく場合、わざわざ日本に行って働く必要はないと思われてしまう可能性は十分にあります。
大企業でも高まる海外のIT人材採用の機運
——なるほど。一方で、2022年時点で日本の外国人労働者比率は2.7%と低い現状があり、ITエンジニアでも同じことがいえるかと思います。なぜ日本企業はラストチャンスになるまで、海外のIT人材の採用に腰が重かったのでしょうか。
佐藤友一朗氏(以下、佐藤) 大企業が積極的に採用してこなかったため、雇用が重く見えているのではないでしょうか。おそらく、多くの人たちが思っているほど、中小企業やベンチャー企業は海外のIT人材を採用することに対して腰は重たくないように感じています。むしろ実力があって、自分たちのカルチャーにフィットしてくれて、日本が大好きな人だったら、ウェルカムだという状況が続いています。
大西 そうですね。一方で大企業も、3年ほど前から海外のIT人材の活用に乗り出しています。当社のxseeds[1]のクライアントは、今では約半数もエンタープライズ企業です。
これまでは非IT系企業でも、国内の業界トップの会社であれば、国内の大学・大学院とのつながりがあり、機械工学部や電気工学部といった機電系の学生は確保できていました。
しかし、今はそのハードウェアとソフトウェアの垣根がなくなっています。各業界のトップ3にいるような会社でも、日本国内のトップクラスにいる情報工学系の学生になかなか会えない、アプローチができないという状況のようです。そういった背景から、海外に目を向けようと参画いただく会社は増えていますね。
注
[1]: グローバルにコンピューターサイエンスのトップの大学と産学連携で教育を提供し、日本企業へ新卒エンジニアとして採用支援を行うSun Asterisk社のサービス。