サービス提供では「何をすべきか」は二の次
IT企業で「サービスとは何か」と聞いてみると、答えに困ってしまう方が少なくありません。はじめに、サービスの本質を理解することは、ITサービス事業の変革に欠かせません。
いったい“サービス”とは何なのか? その定義は次の通りです。
人や構造物が発揮する機能で、お客様の事前期待に適合するものをサービスという
この定義で最も大切なのは、「事前期待に適合するものをサービスという」のところです。いくら我々がお客様のために良かれと思ってしたことであっても、お客様の「事前期待」に合っていなければ、サービスとはいえません。それはもはや、余計なお世話や無意味行為、迷惑行為です。「事前期待」をつかまなければ、サービスを提供することすらできないのです。
ちなみに、顧客満足の定義からも事前期待をとらえることの重要性は見えてきます。
「顧客満足は、お客様の事前期待を、サービスを受けた後の実績評価が上回ったときに得られる」。これが顧客満足の定義です。もし事前期待よりも実績評価が小さいとガッカリされてお客様を失うことになります。また、事前期待と実績評価がほぼイコールだと、期待に応えてはいるものの、印象が薄いので競合他社に乗り換えられてしまう可能性が高いといえます。
このようにサービスや顧客満足の定義から、サービスの提供においては「事前期待」を把握することが何より大切だと分かります。言われてみれば当たり前でイメージ通りだという方も多いと思います。しかし実はこの定義から、これまでの取り組みが少し筋違いだったと気づくことができます。
サービスや顧客満足の議論のほとんどは、「何をすべきか」にしかフォーカスできていません。どんな機能やメニューを開発すべきか。何をしたら顧客満足が高まるのかの議論の終始する。これではうまくいくはずがありません。何をすべきか打ち手を考える前に、「どういう事前期待に応えるべきか」を議論すべきです。どんな事前期待に応えられるサービスを開発すべきか。どんな事前期待に応えたら顧客満足は向上するのか。事前期待の的を見定めるのです。