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インタビュー | IT企業のM&A

IT企業の間でM&Aが急増中、会社を売却する企業・買収する企業双方の思惑とは――経営承継支援 笹川敏幸氏、岡﨑敬氏

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 建設業界と並び、人手不足が大きな問題となっているIT業界。現在、IT企業のM&A件数が伸びているという。なぜ、人手不足を背景にM&Aが増えているのか。M&A後のITエンジニアの処遇は? 中小企業の事業承継M&Aに強みを持ち、IT企業のM&Aも手がける株式会社経営承継支援の笹川敏幸氏(代表取締役社長)、岡﨑敬氏(コンサルティング部マネージャー)に話を聞いた。(※2019年3月28日取材)

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成長のためのM&A

――IT企業の間でM&Aが急増しているそうですが、どういう理由でM&Aを実施する会社が多いのでしょうか。

笹川敏幸氏(以下、笹川):M&Aには大きく「吸収合併のパターン」と「第三者による子会社化のパターン」の2つがあります。手法でいうと、今は圧倒的に後者のほうが多いです。

 30~40年前、日本のM&Aはほとんどが吸収合併でした。特にダイエーに代表されるように、小売店がすごい勢いでM&Aを繰り返していて、その時の手法はすべて吸収合併だったのです。当時は連結という考え方があまりなく、売上を伸ばすためには吸収合併をするしかありませんでした。

 吸収合併は、M&Aの中で最も効果があるのは確かです。2つの企業が1つになるので、要らないものを強制的に排除できるなどのメリットがあり、すごく効果が上がる。その代わり、劇薬にもなりかねません。吸収合併を契機に変わってしまった社内風土と合わなくなり、人が辞めていくこともあるからです。

株式会社経営承継支援 代表取締役社長 笹川 敏幸氏
株式会社経営承継支援 代表取締役社長 笹川 敏幸氏

――そういう意味ではいわゆる合併ではなく、子会社化するケースも多いのでしょうか。

笹川:そうですね。株式の売却による子会社化が非常に増えています。弊社はこの子会社化も手がけていますが、取り扱うM&Aの目的の多くはあくまで第三者による事業承継です。

――子会社化による第三者承継の場合、親会社から誰かが経営者として子会社に行き、後を継ぐのでしょうか。

笹川:はい、その形が一番多いと思います。

岡﨑敬氏(以下、岡﨑):親会社から派遣するのですが、社長を常勤とするかはケースバイケースです。最近のIT企業に関していうと、子会社化された企業の中から代表取締役を出し、親会社からは社外取締役として取締役会を監視するという形が多いように思います。なぜなら、違う会社から役員がぞろぞろ入って違う文化を持ち込むと、軋轢が出やすいからです。また、親会社に派遣できる役員がいないということも深刻な理由の1つです。

株式会社経営承継支援 コンサルティング部マネージャー 岡﨑 敬氏
株式会社経営承継支援 コンサルティング部マネージャー 岡﨑 敬氏

――経営者も人材不足なのですね。IT企業の中でM&Aが急増している背景には、跡取りがいないという問題があるのですか。それとも別に理由があるのでしょうか。

岡﨑:パッケージベンダーの例でいうと、30年くらい前に会社を始めた企業が多く、経営者が高齢化しています。そうした企業は利益を出していることが多く、株価も高くなっています。無料で譲ると税務署が黙っていませんから贈与というわけにもいかず、社内で承継することが難しいと思います。

 そうしたことが背景となって、最近お手伝いした中に、システム開発を手がける中小IT企業の若い2代目オーナー社長が同社を売却した例がありました。買収したのは、社会システム事業なども手がける大手IT企業です。IT業界は、経営者が売る例が他の業界に比べて多い印象があります。

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この記事の著者

市古 明典(IT人材ラボ ラボ長)(イチゴ アキノリ)

1972年愛知県生まれ。宝飾店の売り子、辞書専門編集プロダクションの編集者(兼MS Access担当)を経て、2000年に株式会社翔泳社に入社。月刊DBマガジン(休刊)、IT系技術書・資格学習書の編集を担当後、2014年4月より開発者向けWebメディア「CodeZine」の編集に参加。その後、資格学...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

八鍬 悟志(ヤクワ サトシ)

都内の出版社に12年勤めたのちフリーランス・ライターへ。得意ジャンルは労働者の実像に迫るルポルタージュと国内外の紀行文。特にヒンドゥ教の修行僧であるサドゥを追いかけたルポルタージュと、八重山諸島を描いた紀行文には定評がある。20年かけて日本百名山の制覇を目指しているほか、国内外を走るサイクリストとし...

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