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イベントレポート | Scrum Recruiting LABO #1

「スクラム採用」の成功には経営陣のコミットが必須、停滞しても次の採用サイクルを待つ――メルカリ、ヘイ、HERP、YOUTRUST《後編》


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 メルカリ、ヘイ、HERP、YOUTRUSTの代表取締役や人材組織担当者らが集まり、3月13日に東京・恵比寿で開催された「スクラム採用」についてのトークイベント「Scrum Recruiting LABO #1」レポートの後編。前編では、メルカリとヘイがスクラム採用を始めたきっかけや、スクラム採用を行うときの人事と現場の役割分担などについて語られた。後編では、全社で採用活動を行うためのコツやインセンティブ設計などへ話が進んでいく。

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前編はこちらから。

パネリスト

  • 石黒卓弥氏(株式会社メルカリ Manager, Organization & Talent Development)
  • 佐俣奈緒子氏(ヘイ株式会社 代表取締役副社長)

モデレーター

  • 庄田一郎氏(株式会社HERP 代表取締役CEO)
  • 岩崎由夏氏(株式会社YOUTRUST 代表取締役)

経営陣のコミットが何より重要

庄田一郎氏(以下、庄田):では、3つ目のテーマ「『全員が採用担当だ!』と言ってもなかなか動きません。立ち上げるときのコツや躓(つまず)きポイントを教えてください」についてです。石黒さんからは「経営陣のコミット&会社がいい会社であること」、佐俣さんからは「採用の仕事を見える化する。かつ、経営者がコミットする」と回答いただいています。

石黒卓弥氏(以下、石黒):まず「経営陣のコミット」に関しては、まさに佐俣さんが良い例なのですが、代表をはじめとする経営陣自身が会社についてよくSNSで投稿・ツイートするんですよね。それを見ていると自分たちも理解が深まるし、経営陣が楽しそうにしていると自信が湧く。やはり100%会社に安心を感じている人はいなくて、みんなどこかに不安を感じているものですから。

 もう1つの「いい会社であること」というのは、メンバー自身が良い会社と思えないと、自分のとても大切な友人を誘って来られないですよね。選考過程の結果は分からないわけですし。だから、本当に自社のことを「いい会社だ」「好きだ」と思えるようにすることに人事は注力するべきです。よく「巻き込むために(社員に)片っ端から声をかけています」という人事の話を聞きますが……まさに『北風と太陽』の話なので、社員が自ら動くように“太陽”のやり方を選ぶほうがよいと思います。

 また、可視化することがとても大切だと思います。弊社では、経営陣のカレンダーがいまだに全社で丸見えの設定なんですよね。もちろん一部の権限設定はありますが。そこで「あ、今日はこの人とランチに行くのか」といったことが日常的に分かる。そうすると社員としても、経営陣がこれだけ採用に時間を割いているのに、なぜ自分たちはそれができないのかと思うわけです。

石黒 卓弥氏
石黒 卓弥(いしぐろ たかや)氏
株式会社メルカリ Manager, Organization & Talent Development。
NTTドコモに新卒入社後、マーケティングのほか、営業・採用育成・人事制度を担当。また事業会社の立ち上げや新規事業開発なども手掛け、2015年1月にメルカリに入社。 メルカリでは採用を中心とした人事企画を担い、2019年2月より現職にて組織・人材開発の領域を担当。複数のスタートアップにて人事領域のアドバイザーも務める。

庄田:ヘイさんも、(経営陣の)コミットという点で積極的に取り組まれていますよね。

佐俣奈緒子氏(以下、佐俣):1年前までは、採用市場にヘイとしてのブランドがまだなかったことも大きいです。コイニーとストアーズは両社とも採用にコミットしていなかったというのと、そもそもあまり採用そのものを行っていなかったので。そこからの経験でお話しすると、経営陣のコミットがとても重要です。逆に、経営陣がコミットしない会社で、人事だけで社内に働きかけるのはかなり難しいのではないでしょうか。私自身、もし社員として人事から言われたら採用活動に取り組むかというと……正直なところ自信がありません。ヘイ以前も経営者として採用活動に取り組んでいたつもりだったのですが、今ほど時間をかけてはいませんでした。ということは、経営陣としてその重要性を理解できていなかったのだと思います。

 ただ、だからといって経営陣のそうした意識を人事が変えていけるのかというと疑問を感じます。昨日、fladdict(深津貴之)さんがnoteに、デザインや技術について経営陣に理解してもらうにはどうすればよいかというテーマで投稿されていたのですが、結局、デザインや技術に興味や理解を持っている経営陣と働くのがよいとのことでした。そのお話に近いところがあって、採用や人事に興味を持っている経営陣と働くのが一番なのではないでしょうか(笑)。ヘイは経営陣がコミットするようになりましたが、つまずきポイントとしては、まず経営陣がちゃんと人事の声を聞き届けてくれるかどうかということがあります。

 もう1つは、採用の仕事が見えづらいこと。そもそも採用担当が何を考えて、どんな業務に取り組んでいるのかが理解されていない。なので、何をやっているのか、どれくらい時間がかかっているかなどを見える化したほうがよいですね。その上であれば、「この人数を採用するのは人事だけでは無理だよね」「みんなでやらないと目標達成できないよね」などのように社員に協力を求めるコミュニケーションを現場サイドができると思います。ヘイでは中途採用に関する進捗を全部Qiitaに上げていて、「このポジションが足りていない」と毎週のように社内で認識が共有されています。月に一度の全社総会でもアナウンスがある。どれくらい進んでいるのか、ゴールに近づいているのかというプロセスを見える化していくのは良いことだと考えています。

佐俣 奈緒子氏
佐俣 奈緒子(さまた なおこ)氏
ヘイ株式会社 代表取締役副社長。
2009年より、米ペイパルの日本法人立ちあげに参画。加盟店向けのマーケティングを担当し、日本のオンラインサービス/ECショップへPayPalの導入を促進。2012年3月にコイニーを創業。

岩崎由夏氏(以下、岩崎):「このポジションが採用できていない」といった結果の見える化は分かりやすいと思いますが、採用過程の見える化については具体的にどのように実施されているのでしょうか。

佐俣:公開しているのは、「今週、このポジションが埋まりました」「内定相談を受けました」といった結果が主になっています。とはいえ、採用ポジションがどんどん増えて忙しくなっているので……プロダクトっぽい発想ですけど、今週「ベロシティ」を出そうと思っていて。たとえば、エンジニア採用にかかる工数を10とすると、営業だと7、アルバイトは2といった具合に見積もった上で、空いているポジション数がいくつで、どのくらい担当しているかを計算すると、ベロシティという自分にかかる工数が出るんですよ。そうしてベロシティを計算した結果、「これ、破綻しているね」となると、それは現場に回すか人事を強化するかしないとゴールを達成できないということになる。そのようにベロシティを見ています。組織そのものを完全にプロダクトとして捉えて、いかにグロースさせるかという考え方ですね。

庄田:ベロシティを出そうと考えたきっかけは何ですか。

佐俣:以前は正社員と業務委託の採用が多かったのですが、その後アルバイトや契約社員も採用するようになり、契約形態の種類が増えていったんです。また、採用する職種も増えました。雇用契約の種類や職種が増えると、採用活動にかかるリソースも増えていきます。たとえば、「バックエンドのエンジニアを10人」「アルバイトを1人」「QAを1人」と職種が増えていくと工数がばらけ、リソースを分散しなければならない。その状況を放置すると人事が疲弊してしまいます。

 その一方で、事業が成長していて思ったより数字が伸びており、いま人を採ったほうがよいということも事実。そうなった時に、人事は自分たちが頑張るという方向に行きがちで、人事を増やすという意思決定が遅れる傾向にあると考えています。しかし、それでは破綻してしまうので、なるべく早くキャッチし、どこで問題を解消するかを決めていますね。

 ただ、いま言ったのは工数のベロシティだけですけれど、本当は緊急度、重要度、難易度があり、それぞれもっと細かくベロシティを管理できるのではないかと考えています。そのベロシティをもとに人事の担当割りをすることも可能かもしれませんし、その場合チームとしては冗長性が出てしまうのではないか、とイメージすることもあります。

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この記事の著者

池谷 翼(YOSCA)(イケタニ ツバサ)

大学在学中に先端情報技術と社会の関係性に関心を持ち、独自に情報収集を始める。現在はIT・テック系ライターとして、業務効率化支援などtoB向けITツール・サービスをテーマとした取材、記事執筆を中心に活動中。趣味はSF映画鑑賞。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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